1955年ケンタッキー:「Kelly-Hopkinsville の異星人遭遇事件」の謎を解く



前置き

- この事件の謎は、後述のように簡単に解ける筈。

事件概要1:過去記事

1955年ケンタッキー:Kelly-Hopkinsville の異星人遭遇事件の詳細 (2012-01-07)
▼展開
・昨日の記事  1955年ケンタッキー:Kelly-Hopkinsville の異星人遭遇事件  では事件そのものの詳細は省略していた。せっかくの機会なのでこの事件の詳細を紹介する。

要旨

・日時:1955年8月21日の夜 ・場所:ケンタッキー州クリスチャン(Christian)郡 Hopkinsville の近くの町 Kelly ・Sutton 一家と友人の Billy Ray Taylor と一緒に Sutton の家で過ごしていた。当日、この家には 7人の大人がいた。家長の "Lucky" Sutton は付近の一族の族長だった。 ・ Billy Ray Taylor が水を汲みに家の外の井戸へ出向いた。Sutton 家には水道の配管はなされていなかったからだ。 ・その時 Billy は 400m 先の峡谷に巨大な輝く物体が着陸するのを見た。走って家に戻りそのことを報告したが、馬鹿げていると笑われ、誰も信じなかった。 20120107_kellyobject.jpg ・しばらくして、家の外で飼い犬が大騒ぎしはじめた。Billy と Lucky は銃を手にして、外に出た。この地域の習慣として、銃を撃ってから問いただすつもりでいた。 ・二人は玄関のドアからほんの少し先で立ち止まった。身長 3~4フィートの生き物がまるで降伏するように両手を挙げて近づいてきたからだ。 ・その生き物はとても変わっていて、大きな目、大きく薄い口、大きな耳、短い足、爪のある手をしていた。 20120107_alien.jpg ・この緑色をした小さな生物に怯えて Billy は 22口径(弾の直径 5.6mm)の銃を発砲した。Lucky も散弾銃を撃った。 ・後に二人は、あのような至近距離で撃ち損じるなんてありえないが、あの生物は後方宙返りをして森の中に逃げ込んだ、と述べた。 ・二人が家の中に戻るとすぐに、あの生物が窓の所に現れた。彼らはそれにめがけて銃を撃った。窓の網戸には穴が開いた。彼らは家の外に走り出てあの生物が死んだかどうか確かめたが、何も見つからなかった。すると家の玄関の前に立っていた彼らに、屋根から爪のある腕が下りてきて彼らを掴もうとしたので、二人はゾッとした。 ・二人は再び発砲したが、その生物は宙を飛んで地面におり、そのまま森の中へ隠れた。 ・二人は家の中で守りについたが、家は複数の小さな生物に取り囲まれていた。しばらくその生物たちは家族をからかうように一つの窓に現れ、また別の窓に現れた。・窓や壁越しに発砲したが、あの生物には全く効果がないようだった。 ・恐怖の中で数時間が過ぎ Sutton 一家は家を脱出して Hopkinsville にある警察の助けを求めることにした。 ・一家は二台の車で警察署に行き、保安官の Russell Greenwell に事件を告げた。一家は警察に冗談などではなく本気であることを納得させて、家に行ってもらうことを承知させた。 ・警察が家に到着し、無数の弾丸の穴が窓や壁に開いているのを見つけたが、あの生物の痕跡は何も見つからなかった。 ・Greenwell は現場で 12名以上の警官を指揮していた。Sutton は素面だし本気で何かに怯えていると(訳注:後に書類で?)報告した。 ・背後に済む隣人から「発砲の音を聞き、空に光(複数)を見た」という報告がなされた。 ・この事件の原因の徹底的な調査が行われ警察は 2:15AM に去っていった。警察がさったすぐ後、あの生物(複数)がまた戻ってきた。そして窓から興味深げに覗きはじめた。さらに多くの発砲を行ったが効果はなかった。 ・こうして、さらに異様な数時間が続き、夜明けの直前にそれが終わった。 ・警察は、翌日の新たな調査でも何も見つからず、最終的に空軍の関係者を呼ぶように頼まれた。 ・Billy と Lucky は仕事でインディアナ州の Evansville 他へでかけた。のこりの 5人の大人が空軍と警察の調べを受けた。 ・1955年8月22日づけの 『ケンタッキー新時代 (New Era)』新聞でこの事件が報じられた。世間はこの話は悪ふざけ(捏造)だろう、と見なした。だがそうだとすると次の質問に答える必要がある。なぜ Sutton 一家は一文の金にも宣伝にもならぬ嘘をつく必要があったのか? なぜ家中の壁に銃の穴を開けなければならなかったのか(家の修理費用がかかるのに)?  ・Billy と Lucky を含めたこの事件の目撃者の 7人の大人は、個別に調べを受けて、事件について一致した回答をした。そして目撃した生物を描いたスケッチも似ていた。 ・この事件は Allen Hynek(アラン・ハイネック)博士の調査も受けた。UFO研究家の多くはこの事件は本物だと考えている。

ソース

http://ufocasebook.com/Kelly-Hopkinsville.html (2012-01-07)

事件概要2:過去記事

Richard Dolan : Kelly-Hopkinsville の異星人遭遇事件 (2020-02-28)
▼展開

はじめに

・この事件の詳細は下の過去記事で取り上げた。   1955年ケンタッキー:Kelly-Hopkinsville の異星人遭遇事件の詳細 (2012-01-07) ・Richard Dolan がこの事件について語っている。

抜粋(デタラメ)

・9:00 ・出現した緑の小形生物に散弾銃とライフルで至近距離から射撃したが無傷で逃げた。通常、ありえないことだ。これは Skinwalker Ranch に出現した大型の狼のような生物( dia wolf ?)の件に酷似している。 ・この生物が手を上げて近づいてきた点が気になる。まるで敵意が無いことをジェスチャーで示しているようだから。実際、この生物は人間に危害を加えていない。 ・この未知生物は足の関節を曲げている様子が見受けられなかった。なのに後ろ宙返りをしてみせた。また(ジャンプではなく)浮遊していた。

動画(34:38)

23,789 views,Streamed live on Feb 23, 2020 ・The Hopkinsville Creatures: What On Earth Were They? Richard Dolan Livestream. (2020-02-28)

この事件の謎を解く

- 事件の発端が
その時 Billy は 400m 先の峡谷に巨大な輝く物体が着陸するのを見た。
 となっている。さらに隣家の住人も
・背後に済む隣人から「発砲の音を聞き、空に光(複数)を見た」という報告がなされた。
 と証言している。これは EMF 異常による発光現象を目撃したのだと判断できる。 - その後、
しばらくして、家の外で飼い犬が大騒ぎしはじめた。
 とあるから、この家の周囲にも EMF 異常が発生し、不安に駆られた犬が騒いだ。 - 家の中の人間は程度の差はあれども皆、EMF 異常による意識障害に陥った。ひとりが怪物の幻覚(後にそれは ET と解釈された)を見て騒ぎ、まわりの人間も意識障害で被暗示性が高まっているため、パニックとなり、それぞれの眼にも怪物が見えた。 - 実際、この ET が実在した証拠は皆無。足跡ひとつすら発見されていない。至近距離で銃撃されたにも関わらず無傷で負傷の痕跡も皆無。さらにこの ET は、実在する生物には無理な運動(空中浮遊)を何度もしたと証言にある。 - よって、すぐ後で述べる客観性の罠を考慮すれば「EMF 異常→意識障害→幻覚」という機序でこの事件の謎は解ける。

UFO/ET 現象における客観性の罠

- 「EMF 異常→意識障害→幻覚」説で、問題となりうるのは
・Billy と Lucky を含めたこの事件の目撃者の 7人の大人は、個別に調べを受けて、事件について一致した回答をした。そして目撃した生物を描いたスケッチも似ていた。
 という箇所。 - つまり、   ・(a) 事件当事者が皆、事件について一致した回答をした。   ・(b) 事件当事者の「目撃した生物を描いたスケッチ」が互いに似ていた。  という点が、この事件の ET が幻覚ではなく実在である根拠と見なされてきた。多数の目撃者がいる UFO 事件(*1)ではこれらが客観的事実であることの重要な根拠とみなされてきた。   ・この事件に絞れば、誰もが謎の怪物の幻覚を見たという点で一致するゆえ、a は当然のこと。彼らは互いに事件直後に状況を反芻し合っただろうから、話は一致する。   ・怪物がどんな姿だったかを事件直後に互いに語り合わない筈はない。 - たぶん、ここで最も重要なのは、   ・怪物の姿やその行動の細部は、「事件直後の体験者どうしの体験談の交換によって生まれる」(仮説: *2)  という点。つまり、   ・今まさに ET/怪物と遭遇している時は、意識障害による幻覚を見ている最中なので、入眠時幻覚のような曖昧で漠然としたイメージでしかない。(*3)   ・その曖昧で漠然としたイメージが「事件直後の体験者どうしの体験談の交換」を経ることによって、怪物の姿やその行動の細部が「事後的に生み出される」。(*4) - こういった機序で、先の a と b という偽の客観性が生じた。

(*1)

- 多数の目撃者がいる UFO 事件… - たとえば…   1966-04-06、オーストラリア:Westall UFO 事件目撃者の証言 (全体) (2022-02-28)   1994年ジンバブエの小学校児童62人が UFO から降り立った宇宙人を目撃 (2011-08-29)   1994年、ジンバブエの小学校で ET を至近距離から目撃した人物の証言 (2018-06-28)   Linda Zimmermann : 3人の学校教師が低空で頭上に浮かぶ UFO を 20分間目撃。同夜、UFO が写真撮影され地元紙に掲載された。 (2021-08-31) UFO

(*2)

- この仮説は、過去記事で述べてきた「共鳴的認知」の合理的解釈版に相当する。「共鳴的認知」の ESP 的解釈版もある。 - 今回取り上げた「1955年ケンタッキー:Kelly-Hopkinsville の異星人遭遇事件」では、この合理的解釈版でほぼ説明できるようだ。 - だが、Allagash abduction 事件のスケッチ(下)は上記のような合理的解釈版で説明するのは難しいと感じる。このような場合にそなえて「共鳴的認知」の ESP 的解釈版の出番があるw
20220128_fig1.jpg Allagash abduction 事件の後日談:4人の被害者の一人が否認 (+追加) (2022-01-27)

(*3)

- 入眠時幻覚のような曖昧で漠然としたイメージ… - それゆえに UFO/ET 目撃直後に、それを奇妙にもすっかり忘れ、後日なにかの切っ掛けで思い出した…という報告が多数ある(下の過去記事で取り上げた)。直後に忘れるという点で入眠時/覚醒時幻覚と共通している。ET/UFO がわざわざ目撃者の記憶を操作しているのではない。
- UFO 目撃直後に、目撃したこと自体をすっかり忘れ、後に急に思い出す事例が多数報告されているが… - UFO を目撃したが直後にその体験をすっかり忘れ去ってしまい、自分が目撃直後に書き残したメモなどでようやく思い出した…そいういう奇妙な事例を過去記事でいくつも取り上げた。たとえば…   1994年10月、バージニア州:一部が透明な全長 300m の三角形型 UFO を至近距離で目撃(途中:その2) (2014-05-21)   Linda Zimmermann が自身の UFO 目撃体験と、謎の記憶の欠落を証言 (2020-06-28)   Richard Dolan : UFO 目撃直後の不可解な忘却 (2019-01-20)   1998年8月2日:UFO をビデオ撮影した直後、家の内部から UFO 内部に引きこまれた (途中:その1) (2015-06-26) ref: Tim Seanor : : 一家全員が四角形、円盤、葉巻型 UFO 群を目撃、写真撮影 (途中3) (2022-03-19)

(*4)

- 事後的に生み出される… - 目撃者、体験者がひとりだけの場合も原理は同じ。体験後に事件内容をひとりで振り返って反芻する作業が必ず伴う。その反芻作業によって UFO/ET/abduction 事件の細部が「事後的に生み出される」。 - おまけに、退行催眠という意識変容を伴う「事件の共同反芻作業」が UFO 業界には蔓延している。つまり、退行催眠も UFO/ET/abduciton 体験の「事後生成」の有力な要因となっている。 (2022-04-08)

初出

1955年ケンタッキー:「Kelly-Hopkinsville の異星人遭遇事件」の謎を解く (2022-04-08)