「我々は誕生前に人生を計画し、同意した上で生まれた」という精神世界の説は破綻している

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(2020-08-16) 追加
(2020-08-13) 作成

前置
・精神世界信者の「我々は人生を計画し、同意した上で生まれる」説（以下、「誕生前人生選択説」と略す）とは、

　　・(a) 我々は、生まれる前に何を行うかを予め計画し、
　　・(b) その計画した人生を実体験することに同意している。

　という主張で、過去記事（*1）で詳しく取り上げた。

・この「誕生前人生選択説」は精神世界に広く蔓延っているが、この説は完全に矛盾している。なぜか、この明白な矛盾を誰も指摘していないようだ。「誕生前人生選択説」の抱える矛盾に気づき呆れても、わざわざその矛盾を指摘するような親切な暇人はいないらしい。

・私は暇でも親切でもないが、「誕生前人生選択説」が垂れ流す害悪は座視できないのでその矛盾を説明しておく（こんな無名 Blog で説明しても無駄な事は百も承知だが…）。

具体例
・どこが矛盾なのかを理屈めいた抽象論や一般論でグダグダと説明するより、具体例で示した方が手早いと思うので、まずは具体例を述べる。


(例 1) 若い女(W)が、年上の男（M）と恋仲になり、赤子（B）が生まれた。M は W を見捨てて逃げ去った。W は B を山に放置して見殺しにした。

(例 2) Curtis LeMay（カーチス・ルメイ）少将は東京大空襲を指揮し、10万人以上を殺害した。

(例 3) Harry Truman（ハリー・トルーマン）大統領は広島と長崎への原爆投下を命令し、数十万人を殺害した。


矛盾
・上の具体例には「誕生前人生選択説」の次のような あからさまな矛盾 が露呈している。

例1 の事例
・若い女W が赤子B を見殺しにした事例では、 W は生まれる前に B を見殺しにすることを計画、同意している筈。年上の男M も生まれる前に W を捨てることを計画、同意している筈。赤子B も見殺しにされることを計画、同意している筈。

・問題は、若い女W が計画、同意した時点では、まだ赤子B は生まれていない。それゆえ、若い女W が生まれる前に何を計画、同意したところで、将来の赤子B は何も知らない。よって B が若い女W の見殺し計画に同意するとは限らない。

・同じことは年上の男M にも言える。M が生まれる前に、若い女W を捨てることを計画、同意した筈だが、その時点では、W はその計画など知らない。よって後に W が M の計画に同意するとは限らない。

・つまり、「誕生前人生選択説」が成立するためには、その人生の登場人物全員が、生まれる前に同じ人生ドラマの脚本に同意し、その配役を引き受けなくてはならない。ところが、互いに生まれる時点が年単位で異なっているから、最初に生まれた人(この場合 M) 以外の人々（W, B）は、M の計画した脚本に同意することしか許されない。

・年上の男M にしても、彼より「年上の関係者が生まれる前に計画した人生の脚本」に背くことは許されない。

・よって、「誕生前人生選択説」が成立するためには、先人の計画した脚本の部分には同意することしか許されない。先人が計画していない部分（＝先人が全く関与しない部分）だけは自分の希望する脚本を計画できるが、その部分はごくごく僅か。つまり、人生に選択の余地はほとんど無い。

・言い換えると、「誕生前人生選択説」は運命既定説（＝運命は決まっており変えることはできず、運命を受け入れるしかない）と何の違いも無い。精神世界信者は、運命既定説の真逆だと信じているが、実は錯覚でしかない。

関係者全員が合議の上、同意している可能性も無い
・上のような矛盾を回避するためには、

　　・関係者全員が（時間を超越した領域で？）合議して計画し、皆が同意している。

　と考えるしかない。そのような証言は聞いたことがないが、仮にそのような証言があったとしても、更なる困難が生じる。その困難を説明するために 例2 と例3 を用意しておいた。

・ 例2 と例3 の場合、直接の関係者だけでも数十万人になる。「誕生前人生選択説」によれば、Harry Truman は生まれる前に大量殺害を計画した筈だが、それが実現するためには最低でも数十万人が殺されることに同意していなければならない。つまり、

　　・関係者全員が（時間を超越した領域で？）合議して計画し、皆が同意

　している必要があるが、「数十万人が合議して計画し、皆が同意できた脚本が原爆投下という大量殺害だった」と本気で思い込めるのは精神世界のヨタ話（*2）を信じるような人間だけ。

おまけ
・アメリカでは左派と右派が激しく対立し、市街地で暴動も起きている。このような対立は

　　・関係者全員が（時間を超越した領域で？）合議して計画し、皆が同意

　した上で成立した結果なのだ…そう「誕生前人生選択説」は主張することになる。

・「皆が合議して同意できた結果」が激しい対立だ…これ自体が矛盾の塊w


（*1）
　　Grant Cameron : 我々は人生を計画し、同意した上で生まれてくるのだ。 （途中：その2） (2020-08-12)

（*2）
・「善悪は本当は存在しない。全ては舞台の役柄のようなもの」…の類。

・他にも、たとえば…

I was being made to understand that "no matter what happens, everything is all right, always."

宗教/精神世界に典型的な不条理な自己洗脳フレーズの具体例 （途中：その1） (2020-07-19)



(2020-08-13)
(2020-08-16)