US 政権に直結した戦略シンクタンク : 「中共政権崩壊」は不可避、かつ差し迫っている → US 政府のとるべき緊急戦略を提言
前置き
US 政府の保守系シンクタンク的存在である Hudson Inst. が先ごろ公表した講演動画を取り上げる。この動画の重大な意味に気づいているのは政治・経済の専門家でもごく少数の筈。それは、
"After the Fall: Planning for a Post-Communist China" (崩壊後の中国:ポスト共産党時代の計画)
という講演動画。複数の中国専門家による多岐にわたる内容なので、動画は 3時間を超える。これを AI で整理した。
US 上層部は近い将来の中国崩壊を前提にして戦略的に動いていることがわかる。US は崩壊後の中国の民主化や憲法のあり方まで検討しているというから、恐れ入る。US は倒れた中国をその骨の髄まで食い尽くす気で、虎視眈々と準備を進めている。
日本政府は準備どころか、ある日突然、倒れた中国の余波をくらって茫然自失、中国在住の 10万の日本人救出に右往左往するも…となる筈。
概要
ポスト共産主義中国の計画: 崩壊後の戦略的展望
この文書は、ハドソン研究所が主催した「ポスト共産主義中国の計画」に関する会議の転写の一部です。この会議は、中国共産党の潜在的な崩壊と、それが国際社会に与える影響に焦点を当てています。
ジョン・ウォルターズ氏とマイルズ・ユー氏が会議の目的を述べ、CCP崩壊後の課題、例えば安定化、核兵器や生物兵器の確保、真実と和解の推進、憲法による統治への移行などについて議論しています。
ランディ・シュライバー氏は、特に混乱期における中国の安全保障部隊の役割と、将来的にそれらが結束を保つ可能性について語っています。
最後に、ゴードン・チャン氏とリック・フィッシャー氏は、中国崩壊時の経済的措置、例えば資産凍結や米国企業の撤退、そして中国の軍事能力の再構築の必要性など、具体的な行動について提案しています。
目次
- 前置き
- 概要
- 音声対話
- 詳細
- 時系列:ポスト共産主義中国の計画
- 主要関係者
- 歴史上の人物、言及された人物
- 分裂しない可能性が高い(習近平時代の中央統制強化)
- 民族的復讐の防止(チベット・新疆
- 真相究明と和解プロセス
- 緊急措置(ビジネス・金融)
- 米国在住中国人(学生、国民)と日米関係
- 失敗へのヘッジ戦略
- ロシアとの関係がより複雑である可能性
- ファイル(Dossier)制度
- 具体的な地域
- 中国共産党の崩壊は現実的か?(党自身が毎日懸念)
- 先例:ソ連共産主義の突然の崩壊
- 大規模な難民流出の可能性
- 情報源
- 文字起こし
音声対話
途中で音声が途切れている期間がある。
詳細
ハドソン研究所主催「ポスト共産主義中国の計画」会議ブリーフィング資料
このブリーフィング資料は、ハドソン研究所が開催した「ポスト共産主義中国の計画(Planning for a Post-Communist China)」会議の講演動画の文字起こしを基に作成された。本会議は、中国共産党(CCP)の潜在的な崩壊と、それ に伴う国際社会が直面する課題への戦略的先見性を行使することを目的としている。
1. 会議の目的と CCP 崩壊の前提
ハドソン研究所のジョン・ウォルターズ所長兼 CEO は、CCP が「前例のない経済成長と積極的な世界的統合の40年」を経て、「ますます不確実な経済見通し、より敵対的な国際環境、習近平の政治的中央集権化の努力により課題に適応できない脆い統治モデル」といった複雑な構造的変化に直面していると指摘した (0:00:32)。マイルズ・ユー中国センター所長は、CCP の崩壊は「世界がナチス・ドイツ、大日本帝国、そして東欧におけるソビエト共産主義の崩壊後に直面したのと同様の困難な課題」を提示すると強調し、その対応として体制の安定化と社会の正常化が重要であると述べた (0:03:15)。CCP 自体が崩壊を常に意識していることから、このシナリオは非現実的ではないとユー所長は主張する (0:50:59)。
2. CCP 崩壊後の即時課題と安全保障
CCP 崩壊後の即時の課題として、ユー所長はチベットや新疆における民族間の報復防止、国境の確保、核兵器や生物兵器研究所の安全確保、そして「共産主義による70年、80年近くの統 治は嘘と虚偽に満ちている」ため、「真実和解プロセス」の確立を挙げた (0:03:40)。
ランディ・シュライバー氏は、中国の治安部隊、特に人民解放軍(PLA)と人民武装警察(PAP)が果たす役割の重要性を強調した (0:08:32)。彼は、文化大革命や天安門事件における PLA の役割に言及し、PAP が国内の治安維持において強化され、重要インフラの保護や生物兵器・核兵器関連施設の確保を行うと予測した (0:08:56)。シュライバー氏は、習近平政権下での中央集権化の強化により、治安部隊が崩壊後に分裂する可能性は低いと見ている (0:11:38)。彼は、PLA が当面の間、「国内の安定を支援するために内向きに焦点を合わせる」だろうと述べた (0:13:18)。また、外部からの脅威については、「この移行期間における外部からの脅威の概念は非常に限られるだろう」とし、中国は「非常に有能な軍隊」を維持すると付け加えた (0:15:36)。
3. 経済・金融面の課題と対応
ゴードン・チャン氏は、CCP 崩壊後のビジネスと金融に関する対応について言及した。彼は、「中国が崩壊する、つまり中央政府が機能しなくなった場合、我々の国にある中国の資産を可能な限り迅速に差し押さえ、凍結すべきだ」と主張した (0:20:41)。これは、世界的な金融市場の混乱を防ぎ、アメリカの預金者を保護するためである (0:21:13)。特に、中国の銀行は簿価上は破綻状態にある可能性が高く、中央政府の支援がなくなれば貸付価値が劇的に下落すると指摘した (0:22:50)。チャン氏は、米国政府が他の国との調整なしに迅速に行動し、中国が保有する米国債のような外貨準備も差し押さえるべきだと述べた (0:25:42)。さらに、スミスフィールド・フーズのような中国が所有する米国企業も、米国の利益が損なわれているとして差し押さえるべきだと主張した (0:27:13)。
一方で、チャン氏は、米国が特定の中国の派閥を支持したり、CCP を「知っている悪魔」として安定のために支援したりすべきではないと警告した (0:30:25)。彼は、過去に米国大統領が「中国共産主義を救った」事例(ニクソンと毛沢東、ブッシュと鄧小平、クリントンとWTO加盟)を挙げ、それが「今日に至るまで我々の民主主義を打倒しようとしている体制を救った」と批判した (0:31:31)。
4. 長期的課題:憲法、正義、社会変革
4.1 過去の体制転換からの教訓
マイルズ・ユー所長は、東ドイツや北朝鮮の事例に言及し、体制崩壊後の安定化と社会変革において、周辺国(西ドイツや韓国)が重要な役割を果たすことを指摘した。しかし、中国の場合は台湾が規模的に小さいため、「台湾が中国社会の安定化と変革にどのような役割を果たすべきか」という疑問を呈した (0:51:52)。ランディ・シュライバー氏は、台湾はむしろ「独立したアイデンティティ」を追求する可能性が高いと述べ、中国本土の統治に直接関与することはないだろうと推測した (0:53:21)。リック・フィッシャー氏は、独立した台湾の存在が「ポスト共産主義中国にとって最善のこと」であり、「多元的な民主主義をどのように移行させるかという包括的な大学」として本土が同じ移行を行う上で不可欠であると付け加えた (0:54:24)。
4.2. 人民解放軍(PLA)と共産党員への対応
ゴードン・チャン氏は、CCP 崩壊後、中国人は現在のような大規模な軍隊を望まない可能性があり、「これらの資産の多くが錆びついていく」と予測した (0:56:34)。リック・フィッシャー氏は、CCP の党員(1億人以上)への対応について、まず彼らを「世界に特定」し、「個人ファイルは一定程度公開されるべきだ」と述べた (0:58:17)。彼は、毛沢東時代に犠牲になった人々への正義を求めることの重要性を強調した (0:59:36)。ランディ・シュライバー氏は、脱ナチ化や脱バアス化の経験を引用し、過去の経験から組織の機能を維持するためには、あまりにも深くシステムから人々を排除するべきではないと警鐘を鳴らした (1:05:45)。
4.3. 経済的再構築と国際協力
ゴードン・チャン氏は、CCP の「一帯一路」構想(BRI)が中国国民に不評であることを指摘し、崩壊後はこれらの経済的に実行不可能なプロジェクトへの支援がなくなるだろうと予測した (0:56:12)。彼は、中国の金融システムの「内部崩壊か爆発」を予測し、人民元が「今日よりもさらに使われなくなる」と述べた (1:03:05)。
4.4. 統治システムと伝統
ピエロ・タジ氏は、中国の統治システムを「全体主義的システム」と定義し、そのルーツは「法家」思想にあると分析した (1:25:43)。彼は、現在の「社会信用システム」や「戸籍制度(hukou)」が、国民を統制し「予防的抑圧」を行うための手段として機能していると指摘した (1:32:15)。タジ氏は、CCP 崩壊後には、法家思想が拒否された漢王朝の例に倣い、「儒教的立憲主義」の出現や、広東省のような地域における「よりリベラルな政権の出現」といった「地方化」が進む可能性があると予測した (1:42:33)。彼は、台湾の中華民国憲法に存在する「五権分立」(考選院と監察院)が、中国固有の立憲主義に遡る例として挙げられた (1:43:07)。
4.5. 移行期正義と人権
ウィリアム・ニー氏は、CCP 崩壊後の移行期正義の課題について、その「非常に長い歴史」と「組織的な反対勢力の欠如」を指摘した (1:46:37)。彼は、大躍進、文化大革命、天安門事件、新疆ウイグル自治区におけるジェノサイドなど、CCP による数々の人権侵害を列挙し、「どこから始めるべきか」という問題提起を行った (1:48:00)。ニー氏は、チリの事例のように高レベルの委員会を設置することや、中国の広大な地理的・政治的違いを考慮した「地域委員会」の必要性を提案した (1:53:42)。彼はまた、ウイグル人権法廷や新疆被害者データベースなど、人権侵害の記録化における市民社会の努力を強調し、国連システムや宗教コミュニティとの対話の可能性を提示した (1:54:28)。
ニー氏は、習近平の「中華民族の偉大な復興」というスローガンが「恐怖、治安国家の強制措置、権力投射」によってのみ達成されるのではなく、「道徳と美徳に基づいた偉大さ」を追求する可能性もあると述べた (1:58:27)。
ニナ・ツィエ氏は、CCP 崩壊後の米国の政策が、「独立、民主主義、言論の自由、信教の自由、その他基本的な人権を推進する」ことに焦点を当てるべきだと主張した (2:00:34)。彼女は、ソ連崩壊時のジョージ・H・W・ブッシュ政権の「五つの指導原則」(自決、既存国境の承認、民主主義と法の支配の支持、人権と少数民族の権利の保護、国際法と義務の尊重)を中国に適用することを提案した (2:03:16)。ツィエ氏は、香港、新疆、チベット、内モンゴル、寧夏回族自治区といった「自治地域」や「特別行政区」が独立を選択する可能性が高いと予測し、米国は彼らの独立を支援する準備をすべきだと述べた (2:01:38)。具体的な即時行動として、政治犯や宗教犯の解放、強制不妊手術や強制堕胎の中止、強制収容所の閉鎖、臓器移植の一時停止、礼拝所の再開、CCP の思想教育の中止などを挙げた (2:14:37)。
4.6. 新憲法の策定
ドン・クラーク氏は、CCP 崩壊後の中国における新憲法制定のプロセスについて論じた。彼は、ソ連や清王朝の崩壊の経験を引き合いに出し、中央政府の権威が失われても「完全な無政府状態」にはならず、何らかの「権威の源」が出現すると予測した (2:18:20)。クラーク氏は、外部の人間が憲法制定プロセスに「実際的で有用な助言」を提供することは難しいとし、その内容が「極めて地方的な政治的考慮」によって決定されると指摘した (2:19:47)。彼は、憲法が「政治的妥協」を含む必要があり、そうでない憲法は「誰も無視する」可能性が高いと述べた (2:20:57)。
クラーク氏は、憲法の正当性を「上流の正当性」(憲法制定会議の構成)、「プロセスの正当性」(草案作成プロセスの透明性と公開性)、そして「下流の正当性」(批准プロセス)の3つの側面から分析した (2:28:40)。彼は、中国のような巨大で多様な国において、全ての地域で統一的なアプローチを取ることは困難であり、国民投票による批准が「真の政治的正当性」の源になると結論付けた (2:57:01)。ピエロ・タジ氏は、中国の伝統にも「普遍的価値」の概念が存在するとし、中華民国憲法に見られる「五権分 立」が西洋の影響だけでなく、中国固有の立憲主義からも影響を受けていることを指摘した (2:58:46)。
5. 会議全体を通しての主要テーマ
- CCP 崩壊の可能性と準備の緊急性: 専門家たちは、CCP 崩壊のシナリオを現実的な可能性として捉え、国際社会がそれに備えることの重要性を強調した。
- 安全保障と秩序の維持: 崩壊後の混乱を防ぎ、核兵器や生物兵器などの危険な資産を確保し、治安部隊の役割を理解することの重要性が指摘された。
- 経済・金融の安定化: 中国経済の規模を考えると、崩壊は世界経済に甚大な影響を与えるため、中国資産の凍結や差し押さえといった迅速な措置の必要性が議論された。
- 移行期正義と人権: 過去の人権侵害への対処、真実和解プロセスの確立、そして少数民族や市民社会の権利保護が、民主的な社会への移行に不可欠であるとされた。
- 憲法制定と統治モデル: 中国固有の伝統(儒教、法家)と、西洋の民主主義の原則(権力分立、普遍的価値)を融合させた新しい統治モデルの構築が議論された。
- 地域主義と自己決定: 中国の多様性を考慮し、各地域が独自の道を模索する可能性(独立、自治、他国との合併)が提示され、それに対する国際社会の支援のあり方が検討された。
- 情報と世論の役割: インターネットとソーシャルメディアが、情報統制の崩壊と世論形成に果たす役割の重要性が強調された。
この会議は、CCP 崩壊という困難だが起こりうるシナリオに備え、米国とその同盟国がどのように中国の未来を形作るかについての深い洞察と具体的な提言を提供した。
時系列:ポスト共産主義中国の計画
紀元前11世紀~8世紀 (西周王朝)Hukou制度の根源: 戸籍登録制度の概念が初期の王朝時代に遡る。
紀元前221年~206年 (秦王朝) 法家主義の台頭: 人口管理、大規模な強制労働、徴兵制のための戸籍制度が秦王朝で顕著になる。法家主義は準全体主義的な理論として紹介され、地方監視、集団責任、懲罰に重点を置く。
紀元前206年~紀元220年 (漢王朝) 法家主義の拒絶と儒教の台頭