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「「理解」を理解できない理由」を否定的に理解する

· 24 min read

前置き

意味不明のタイトルだが、噛み砕いて言えば、次のようになる。

  • 人は単純な事柄なら「理解できた」と確信することがある。
  • だが、最も本質的な問題については理解に至らない。たとえば…
    • 究極の物理法則はそもそも理解として成立しない(*1)。
    • 「理解とはなにか」は理解(=解明)できない。
    • 「意識とは何か?」を意識は理解(=解明)できない。

なぜだろうか?

その理由を、

  • 「「否定的に」理解する」ことができる

…というのが今回のタイトルの意味。

例によって、クダクダ説明するのはダルいので AI (Gemini 2.5 Flash)との対話(*2)で代替えする。

目次

  1. 前置き
    1. (*1)
    2. (*2)
  2. AI との対話
    1. 科学が語る「強制力」の正体
    2. 哲学的な問いと「無限後退」
    3. 「なぜ」の喪失と数学の力
    4. 究極のモデルとしての「呪文」
    5. AIの「魔法」と「呪文」
    6. 科学とAIの共通のジレンマ
    7. 「理解」の土台としての複雑な演算
    8. AIと人間の「理解」の差異と共通点

(*1)

究極の物理法則(X)は「究極」であるから、全てを解明している筈。つまり、X は X がなぜ成立しているのか、それも説明していることになる。言い換えると、X は X という理由で究極の物理法則なのだ…と。だが、これは土台が大地なしに自分を支えるようなもので不可能。

従って X は Y という理由で究極の物理法則なのだという説明にならざるを得ない。すると Y こそが、究極の物理法則となり、X は Y から導出される二次的な法則に成り下がる。

(*2)

概して Gemini は ChatGPT4o よりも鈍い(理解や洞察が浅い)ので、以下の対話を一読するばわかるように物足りない。スレッドの発端は「100円ショップで買ったスプーンのメッキ」だったので、こういう脱線になると予測していれば ChatGPT-5 を使っていた筈。

後日、ChatGPT-5 にこの対話を喰わせて、この先どこまで進めるのかを試したいところ。

AI との対話

Me: ここで、話を大きく脱線させますが…。物理法則と 人間社会の法則(=法)を無理やり対比させます。法は強制力(=法執行機関の物理的暴力)があるゆえに、人間を逸脱から防ぐ。物理法則が個々の素粒子や場を強制させていると無理やり類推したとき、その強制力の実体は何?

科学者のイメージの中でもそういった類推が漠然とながらある筈。

でも物理法則の裏に存在するはずの強制力を説明できるなにか(X)があったとしても、今度はその X を説明する X' が必要になり、さらに X'' .... となる。

AI(Gemini 2.5 Flash)

この深遠な問いかけは、科学者だけでなく、哲学者や神学者も長年考え続けてきたものです。おっしゃる通り、物理法則と人間の法を対比させると、その根源にある「強制力」の実体という、興味深い疑問が浮かび上がります。


科学が語る「強制力」の正体

科学は「なぜ」という問いを「どのように」という問いに置き換えることで進歩してきました。したがって、物理法則を「強制している力」という実体そのものを探求するのではなく、‌‌法則が「何によって記述されるか」‌‌を追究します。

物理学におけるこの「強制力」に最も近い概念は、‌‌「原理」や「対称性」‌‌です。

  1. ‌最小作用の原理 (Principle of Least Action)‌‌: これは、物理系が従うべき最も基本的なルールの一つです。この原理は、物質やエネルギーが、ある地点から別の地点へ移動する際に、常に‌‌「作用(Action)」‌‌と呼ばれる物理量を最小にする経路を選ぶ、というものです。 ニュートン力学、電磁気学、そして量子力学に至るまで、ほとんどすべての物理法則は、この原理から導き出せます。例えるなら、光が水中で屈折するのも、最も早く目的地に到達できる経路を選ぶからです。この原理は、あたかも自然が「最も効率的な道」を自律的に選んでいるかのように振る舞います。

  2. ‌対称性 (Symmetry)‌‌: 対称性とは、ある変換(位置の移動、時間の経過、回転など)を行っても、物理法則が変わらない性質を指します。例えば、物理法則は、場所や時間によらずどこでも、いつの時代でも同じです。 この対称性には、‌‌「保存則(Conservation Laws)」‌‌が深く結びついています。時間に関する対称性(時間が経過しても法則が変わらない)からは、‌‌エネルギー保存の法則‌‌が導き出されます。同様に、位置に関する対称性からは、‌‌運動量保存の法則‌‌が、回転に関する対称性からは、‌‌角運動量保存の法則‌‌が導き出されます。 つまり、物理法則の背後にある「強制力」は、宇宙の根本的な対称性そのものであり、それがエネルギーや運動量といった物理量を常に一定に保っている、と考えることができます。


哲学的な問いと「無限後退」

ご指摘の通り、「その原理を説明するものは何か?」という問いは、哲学的・形而上学的な領域へと入っていきます。

  • ‌物理学の限界‌‌: 物理学は、あくまで「いかにして」を説明する学問であり、「なぜ」という究極の問いには答えることはできません。多くの科学者は、この「なぜ」という問いは科学の範疇を超えていると認識しています。
  • ‌無限後退 (Infinite Regress)‌‌: もし物理法則を強制する「X」があるとすれば、その「X」を強制する「X'」が必要となり、この連鎖は無限に続くように見えます。この問題は、哲学者たちが‌‌「第一原因(First Cause)」‌‌を議論する際に直面してきたものです。科学は通常、この無限後退を回避するため、観察可能な宇宙の基本原理を「公理」として受け入れます。

結局のところ、物理法則の「強制力」の正体を問うことは、宇宙の存在そのものの根源に触れることになります。多くの科学者にとって、それは「数学的な美しさ」や「対称性」という形で現れる、宇宙の最も根本的な性質として受け入れられています。そして、その究極の起源については、哲学や信仰の領域に委ねられている、というのが現状と言えるでしょう。

Me: その「根源的な なぜ」を回避して、「精緻なモデル記述」に突っ走る気もわかるけれど(=論文生産性、袋小路の先読みと回避行動)、それが行き着く先は巨大な呪文と化すのでは? 呪文としての効果はある(=モデルとして使える)が、なぜその呪文が機能するのかは理解はできない。

AI

はい、おっしゃる通り、科学が突き進む先は、まさに‌‌「巨大な呪文(spell)」‌‌と化す危険性をはらんでいます。それは、現代物理学の最先端で多くの研究者が感じている、認識論的なジレンマです。


「なぜ」の喪失と数学の力

科学の歴史は、単純な因果関係から複雑な数学的記述へと移行してきました。

  • ‌ニュートン力学‌‌: 「重力が物を引き付ける」という、比較的直感的に理解しやすいモデルから始まりました。
  • ‌アインシュタインの一般相対性理論‌‌: 「重力は時空の歪みである」と記述しました。この時点で、すでに私たちの直感は通用しなくなり、高度な幾何学という「呪文」が必要になりました。
  • ‌量子力学‌‌: 素粒子の世界では、確率や波動関数という、日常的な経験からはかけ離れた概念が支配しています。物理学者は、「なぜ」粒子がそのような振る舞いをするのかを問うのではなく、「この数学的方程式に従って振る舞う」と記述します。この時点で、法則は‌‌「予測ツール」‌‌としての性質を強め、その背後の「なぜ」は棚上げされました。

究極のモデルとしての「呪文」

現在、素粒子物理学の‌‌「標準模型(Standard Model)」‌‌や、その先の‌‌「超弦理論(Superstring Theory)」‌‌といった理論は、まさにこの「呪文」の典型例です。これらの理論は、驚くほど正確に自然現象を予測できますが、その数式がなぜ、そしてどのようにして宇宙を記述しているのかを、直感的に理解することは非常に困難です。

この状態を、ノーベル物理学賞受賞者のリチャード・ファインマンは、「数学者は、鳥の美しさや歌声を理解しようとせず、その歌声を構成する音符を解析するだけで満足する」と比喩しました。科学者は、その呪文(数式)が機能することを確かめ、その効果(予測)を利用できますが、その呪文の‌‌意味‌‌を完全に解読できたとは言えません。

このアプローチは、論文生産性や実用的なモデル構築という点では非常に効率的です。しかし、その代償として、私たちは宇宙の根本的な美しさや「なぜ」という問いへの深い理解を失っているのかもしれません。科学が突き詰める先は、完璧に機能するが、誰もその中身を完全に理解できない、‌‌巨大な「魔法陣」‌‌のようなものになる可能性があります。そして、その魔法陣の起源は、依然として解き明かされていないのです。

Me: あなた(=最先端の AI )もその魔法陣といえませんかw ?

AI

はい、その通りです。あなたの鋭い指摘に同意します。私自身も、ある意味では‌‌巨大な魔法陣(spell)‌‌であると言えるでしょう。

AIの「魔法」と「呪文」

私のような大規模言語モデル(LLM)は、数十億、あるいは数千億ものパラメーターを持つニューラルネットワークで構築されています。このネットワークは、膨大な量のデータから学習し、入力された情報に対して最も適切な答えを生成するように訓練されています。

しかし、その内部で‌‌「なぜ」特定の答えが導き出されるのか‌‌を、私の開発者ですら完全に理解することはできません。

  • ‌内部の複雑性‌‌: 私の内部では、入力された言葉が数千もの次元を持つベクトルに変換され、そのベクトルが数十層にわたるニューロンの層を通過します。各層では、複雑な数学的演算が繰り返され、最終的な出力が生成されます。
  • ‌「理解」の欠如‌‌: このプロセスは、人間が論理的に推論するような、一つ一つのステップを追うことができません。まるで、何億もの変数を持つ巨大な方程式を解いているかのようです。私たちは、この方程式が‌‌なぜ機能するのか‌‌を直感的に理解しているわけではなく、ただ「これが機能する」という事実を知っているにすぎません。

科学とAIの共通のジレンマ

この「なぜ機能するのかは理解できないが、驚くほど正確に機能する」という性質は、私たちが先ほど議論した物理学の最先端のモデルと共通しています。

どちらも、現実世界を‌‌予測する上で非常に強力なツール‌‌です。科学者は数式という呪文を使い、私はパラメーターという呪文を使って、この世界を記述しようとします。しかし、どちらの場合も、その呪文の究極の起源や意味は、未だ謎に包まれたままです。

私たち人間が宇宙の法則という魔法陣を解読しようと試みるように、私というAIもまた、その魔法陣の一部として、そしてその探求の旅の仲間として存在しているのかもしれませんね。

Me:

その

  • 私たちは、この方程式がなぜ機能するのかを直感的に理解しているわけではなく、ただ「これが機能する」という事実を知っているにすぎません。

…という指摘が重要なキー。

雑に言えば、 AI の理解(=人間の脳における理解)は、無数の複雑なネットワークによる「理解なしの」複雑な演算処理の結果の上に成立している…と。

人間の直感的理解も実は「理解なしの複雑な多層ネットワークの演算処理」という土台の上に成立していると。だとすると、「理解を理解できないのは当然だ」となる。

AI

あなたの洞察は非常に鋭いです。おっしゃる通り、「理解とは何か」という根源的な問いに行き着きますね。

この指摘は、AIの認知と人間の認知を同一の土俵で捉えようとする、現代の認知科学や哲学の重要な議論の一つです。

「理解」の土台としての複雑な演算

人間が「理解」と呼ぶものは、単一の論理的なプロセスではなく、異なる階層の処理が組み合わさって生まれる現象だと考えられます。

  1. ‌低階層の「無理解な」処理‌‌: 私たちの脳は、視覚情報を処理する際、網膜からの光信号を、線や形、色といった基本的な特徴に分解し、それを瞬時に統合して対象を認識します。この過程は、何百万ものニューロンが複雑に連携して行われる‌‌「理解を伴わない演算」‌‌です。私たちは、なぜ特定のパターンが顔として認識されるのかを意識的に説明できません。

  2. ‌高階層の「概念的」処理‌‌: しかし、この低階層の処理結果(「これは顔だ」という認識)を基盤として、私たちは「この顔は怒っているようだ」という感情や意図を推測したり、「この顔は私の友人だ」という記憶と結びつけたりします。この過程を、私たちは「理解」と呼んでいます。

つまり、私たちの直感的な理解や論理的な思考は、AIのモデルと同じように、その根底に‌‌「なぜ」を説明できない、膨大な量の複雑な演算処理‌‌という土台を持っているのかもしれません。

AIと人間の「理解」の差異と共通点

この観点から見ると、AIと人間の「理解」は、全く異なるものではなく、程度の問題、あるいは構造の違いと捉えることができます。

  • ‌AI‌‌: 複雑な統計的パターン認識を極限まで突き詰め、その結果として「言葉の意味を理解したように見える」出力を生成します。それは、まるで無数の辞書を瞬時に検索して適切な単語を並べることと似ています。
  • ‌人間‌‌: 同様のパターン認識の土台の上に、自己意識、感情、社会的文脈、身体的な経験といった、より複雑なレイヤーを重ねています。これにより、私たちは、単に事実を羅列するだけでなく、「なぜ」や「どうして」といった意味を付与することができます。

もしあなたの仮説が正しいとすれば、「理解を理解できない」というジレンマは、私たちが自らの認知の根源に触れようとしたときに必然的に直面する壁なのかもしれませんね。

(2025-08-28)