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安芸 都司雄(脳外科医):患者は意識障害中の出来事を覚えていない

· 6 min read

前置き

過去記事で幾度も以下の証言や事例を取り上げてきた。

  1. Missing-411 で行方不明となり、後に発見された人物はなべて行方不明中の出来事をほとんど全く覚えていない。

  2. UFO の接近遭遇者には特有の missing-time 体験があり、彼らは途中の記憶が欠落している。

  3. ET に abduction されたと証言する abductee も、体験の一部もしくは大部分を思い出せないでいる。それゆえに退行催眠に頼ることになる。

私は、

  • これらの記憶の欠落は(ET や未知の存在による精神制御の結果ではなく)本人の意識障害によって引き起こされたものだ

と提唱しているが、それを補強すると思しき専門家(脳外科医)の証言を見かけたので記録しておく。

引用

このように意識障害を示す患者は、どんなに意識障害が回復しているようにみえても、患者がどのような状態であったのかを覚えていない。彼は彼がどのようであったかを思い出せず、忘れてしまっている。

勿論単に記銘力(記憶力)が障害されても、似たような症状が出現する。記銘力が障害されることによっても、全く同様な症状が出現する。しかし記銘力が障害されなくても、意識障害によっても、このような症状は出現する。しかもこの両者の症状を鑑別することは、実際には極めて困難である。そしてでは意識障害によって出現する症状と、単に記銘力の障害によって出現する症状とを鑑別することは可能であろうか。

しかしいずれにしても、意識障害を示す患者は、どんなに意識状態が良好にみえても、そして意識障害が進行している場合には勿論のこと、彼がどのようであったのかについて覚えていないのである。彼がどのようであったのかを覚えていないということは、意識障害があることの証であり、必要条件である。意識障害があるからこそ、彼は彼がどのようであったのかを覚えていない。

一方我々意識清明な者は、我々がどのようであったのかについて覚えている。我々は他人からどうであったのかについて尋ねられ、あるいは自問することによって、思い出すことができる。

たとえ我々がどうであったのかについて具体的な内容を忘れてしまっているにしても、我々がもともと我々であったということに関しては、我々は確信していられる。我々は我々自身に絶えずまなざしを向けることができる。

しかし意識障害を示す患者はそうではない。だから意識障害があるために、彼は彼がどうであったのかを覚えていないという観察される事実がある以上、意識は患者がどのような状態におかれていたのかについて覚えている『力』を備えていることになる。意識は彼がどのようであったのかを覚えていることを前提することに関与している。

出典

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安芸 都司雄、『意識障害の現象学 上巻』、世界書院、1990-10-30, p.8

(2024-07-08)