Dr. Michael Heiser : 聖書に記載された「悪魔の正体」を解説する
前置き
神学者の Dr. Michael Heiser が彼の著書、"Supernatural Seminar" の主題について、詳しく解説している。
なお、彼は UFO や超常現象、オカルトにも関心が深い人物。
概要
聖書の悪魔と闇の力
このYouTubeの抜粋では、マイケル・ハイザー博士が彼の著書「悪魔:聖書が闇の力について本当に語ること」について語っています。彼は、自身の信仰の旅路、旧約聖書とセム語の研究がどのように彼を今日の研究に導いたかについて述べています。
ハイザー博士は、聖書が邪悪な超自然的存在についてどのように説明しているか、特にエデン、創世記6章、バベルの塔における3つの反乱に焦点を当てているかを説明しています。彼は、悪魔が低級な存在であり、より広範な敵対的超自然的存在の一部にすぎないと強調しています。
また、彼はスピリチュアル・ウォーフェアが「大宣教命令を達成する」ことによって行われると主張し、サタンは一般的なキリスト教徒の生活に必ずしも介入するとは限らず、それよりも「混沌を最大化する」ことに焦点を当てていると論じています。彼はまた、ヨブ記の「サタン」が必ずしも悪魔そのものではないという彼自身の見解についても述べています。
目次
詳細
ブリーフィングドキュメント:マイケル・ハイザー博士の「DEMONS: WHAT THE BIBLE REALLY SAYS」レビュー
このブリーフィングドキュメントは、マイケル・ハイザー博士の著書「DEMONS: WHAT THE BIBLE REALLY SAYS」に関するインタビューから得られた主要なテーマ、重要なアイデア、および事実をまとめたものです。
著者紹介と著書の背景
マイケル・ハイザー博士は、聖書学とセム系言語学のPh.D.を持つ学者です。幼少期にキリスト教の家庭と交流し、高校時代にキリスト教を信仰するようになりました。彼は、聖書の理解における混乱と問題を解決することに情熱を傾け、特に旧約聖書とセム系言語の分野に深く関わってきました。
今回の著書「DEMONS」は、彼の前著「The Unseen Realm」で導入された概念をさらに深く掘り下げたものです。ハイザー博士は、「The Unseen Realm」が予想外の成功を収めた後、より具体的なトピックに焦点を当てることを決め、「Angels」に続いて「Demons」を執筆しました。
悪の起源:聖書における「3つの反乱」
ハイザー博士の著書「Demons」の最もユニークなアプローチは、超自然的な悪の起源を旧約聖書における3つの超自然的な反乱の観点から考察している点です。
- 最初の反乱:エデンの園(創世記3章)
- これは、平均的なクリスチャンが「なぜ世界は混乱しているのか」と問われたときに答える最も一般的な理由です。人間が神に背いたことで、罪と悪が世界に入り込んだと考えられています。
- 2番目の反乱:創世記6章の「神の子ら」の堕落
- 多くのクリスチャンがこの記述を「非神話化」する傾向にあるとハイザー博士は指摘します。しかし、これは「神の子ら」(超自然的存在)が人間の女性と交わり、ネフィリムを生み出したとされる出来事であり、その結果、地上に大いなる悪が満ちたとされます。博士は、この出来事が旧約聖書と新約聖書の多くの箇所に影響を与えていると強調します。
- 3番目の反乱:バベルの塔(創世記11章、申命記32章8-9節)
- この反乱は、特に現代のクリスチャンにはほとんど知られていないとハイザー博士は述べています。一般的な理解では、バベルの塔で人々が傲慢に塔を建てたため、神が彼らの言葉を混乱させたとされています。
- しかし、ハイザー博士は、古代のイスラエル人や第二神殿時代のユダヤ人にとって、この出来事は神が異邦の諸国民を「神の子ら」(神的存在)に割り当てたことを意味していたと説明します。これは、申命記32章8-9節の「いと高き者が国々に相続地を与え、人の子らを分けられたとき、イスラエルの子の数に応じて諸国民の境界を定められた」という記述の、一部の英語訳にある「イスラエルの子の数」ではなく、死海文書や七十人訳聖書にある「神の子らの数」という記述に注目することで明らかになります。
- この出来事において、神は人類との関係を一時的に断ち切り、諸国民を反抗的な超自然的存在に割り当て、ご自身の民としてアブラハムから新たな家族(イスラエル)を興すことを決意します。この割り当てられた存在たちが、後に偶像崇拝や混乱の原因となり、詩篇82篇で裁かれる対象となります。ダニエル書における「ペルシャの君」や「ギリシャの君」といった世界帝国を背後で操る超自然的な存在の概念も、この申命記32章の視点に由来するとされます。
悪魔と闇の勢力:その定義と階層
ハイザー博士は、彼の著書「Demons」の副題が「聖書が闇の勢力について本当に言っていること」であることの意図を強調します。 「すべての闇の勢力が悪魔であるわけではない」と彼は述べます。「悪魔は非常に特定のカテゴリーであり、ぶっちゃけかなり下位の存在です。」 超自然的な悪の世界には、神とその計画に敵対するはるかに広範な存在が含まれており、これらは上記の3つの反乱にルーツを持っています。
パウロが使用する「支配者たち、権威者たち、力ある者たち、主権者たち、権力者たち」といった用語は、地理的な支配を意味し、地上における地政学的な出来事の背後には超自然的な知性があるという理解を示しています。これらの敵対的な超自然的存在は、神を憎み、人類を憎み、できる限り多くの混乱をもたらそうとします。
サタンと「アドバーサリー」
ハイザー博士は、ヨブ記1章と2章、およびゼカリヤ書3章に登場する「サタン」(ヘブライ語で「ハ・サタン」)が、創世記3章の蛇(悪魔)とは異なる存在であると説明します。
- ヘブライ語では固有名詞の前に定冠詞が付くことはありません。「ハ・サタン」という表現は、それが固有名詞ではなく、「敵対者」や「告発者」といった「職務」を示すものであることを意味します。
- ヨブ記の「ハ・サタン」は、神の神聖評議会における「監査官」のような存在であり、地球上を巡回して情報を神に報告する役割を担っていました。彼はヨブの誠実さを疑うことで「一線」を超えますが、これは神の全知と誠実さを問う行為であり、彼が神に雇われた存在として職務を遂行している様子が描かれています。
- 一方で、創世記3章の蛇は、ヘブライ語聖書では「サタン」とは呼ばれていません。後の第二神殿時代や新約聖書において、この創世記3章の反逆者に対して「サタン」という言葉が適用されるようになったのは、彼が神の計画 に「敵対」したためであり、その行動が「敵対者」という役割に合致したためです。つまり、「サタン」は後にこの反逆者の「機能」を指す言葉として使われるようになりました。
- 結論として、悪魔は存在しますが、彼が神に雇われたり、神の「給与計算書」に載っていたりすることはありません。彼らは神に敵対する存在です。
霊的戦いと大宣教命令
ハイザー博士は、霊的戦いについての一般的な誤解を正します。彼は、「部屋に入って悪魔に怒鳴り散らすこと」は霊的戦いではないと述べます。 真の霊的戦いは、「彼らが最も恐れること」によって達成されます。彼らが最も恐れるのは、「終わりの日」、すなわち神の王国が完全に確立される時です。 したがって、霊的戦いの核心は、大宣教命令を成就することです。「イエスが大宣教命令を与えたときに間違っていたわけではありません」と彼は語ります。 「霊的戦いは、信者が全世界に入っていき、一人一人をヤーウェに勝ち取っていくことによって達成されます。」神の王国が成長するにつれて、闇の王国の力は減少します。闇の勢力は、福音の進展を妨げ、信者の生活を混乱させることで、終わりの日の到来を遅らせようとします。
堕落した超自然的存在の贖い
聖書、特にヘブライ人への手紙2章は、救いの計画が受肉と結びついていると説明しています。神が人間となり、契約を全うし、人類を贖うために来たのは、人間が神の「形」であり、地上の代理人として創造されたからです。人間には、自由な意志と選択の自由が与えられており、これは神の性質を反映しています。たとえその選択が失敗と反乱につながることを神が予見していても、神は人間を創造することを選びました。 堕落した天使や超自然的存在は、この救いの計画の焦点ではありません。ヘブライ人への手紙が「神はどの天使に言われたか」と問いかけているように、計画は人間のためであり、神は人間となることで契約を成就しました。
サタンの関与と信者の生活
ハイザー博士は、サタンがほとんどの人の日常生活に直接関与している可能性は低いと考えています。「もし私がサタンなら、地球を見て『私たちはかなりうまくいっている。一日休んでいい』と言うでしょう」と彼は皮肉を込めて語ります。人類は、大宣教命令を遂行しないこと、罪を犯すこと、そして自己破壊によって、自らを破壊するのに十分な能力と知識を持っています。 サタンは、大宣教命令の成就を遅らせるために、最も大きな影響を与えることができる場所に時間を費やし、混乱を引き起こそうとします。
聖地と悪の場所
旧約聖書には、「宇宙的地理」の概念が存在します。ヤーウェと出会った聖なる場所がある一方で、大いなる悪に明け渡された場所も存在します。 例えば、旧約聖書のバシャンは、ラファ(巨人族の残党)の住処であり、カナン人にとっては冥界への門とされていました。新約聖書時代には、この地にカイザリア・フィリピがあり、イエスが「この岩の上に私の教会を建てる」と述べた場所です。ここは、かつてバアル崇拝の中心地であり、イエスの時代にはゼウスとパンに捧げられていました。また、ここはユダヤの伝承で創世記6章の「神の子ら」が降りてきたとされるヘルモン山の麓に位置しています。悪霊の群れ「レギオン」と遭遇した場所も、バシャンの南部に位置していました。 ハイザー博士は、今日でも世界中には、人々が超自然的な悪に身を委ね、悪の働きが許可され、誘致される場所が存在すると考えています。
罪と悪霊の影響
クリスチャンが悪魔に「憑依される」(所有される)ことはないとハイザー博士は明言します。なぜなら、キリストにある者は「キリストの体」の一部であり、「新しい創造」であり、別の主人に所有されることはないからです。 しかし、新約聖書には「悪魔に機会を 与えないように」といった警告や、誘惑と悪魔の働きを結びつける記述が多数存在します。これは、人間の罪深い行動や特定のエンターテイメントへの関与(ポルノなど)が、悪魔の「影響」や「抑圧」「嫌がらせ」を招く可能性があることを示唆しています。これらの行動は、自己破壊的であり、闇の勢力にとって、信者の生活を妨害する「道具」として利用され得るからです。
聖書学と異世界観へのアプローチ
ハイザー博士は、自身の研究や著作活動において、いわゆる「オカルト」や「UFO現象」「スピリチュアリズム」といった分野にも関心を持っています。これらは、聖書的世界観と物質主義的ダーウィン主義の中間に位置する代替的な世界観として機能すると彼は見ています。彼は、これらの世界観を持つ人々が、教会に行ったり神学書を読んだりすることは決してないかもしれないが、議論の場に着かせることができると考えています。 彼の目的は、彼らの信じる「神秘」や「超越」の存在を肯定しつつ、聖書がそれについて語っていることを、彼らが抱く聖書の誤った認識(カリカチュア)に基づかない、真の学術的視点から再考するよう促すことです。