Carlos Eire : 空中浮揚と 双所併在(Bi-location) の事例
前置き
Carlos Eire(歴史学教授)と Jeffrey Mishlove の対談動画から。
Bi-location(特定の人間が同時に 二箇所に存在する現象)をそのまま英語表記したり、カタカナ表記するのは気が進まないので 「双所併在」 と以下では暫定表記する。
ただし、AI(NotebookLM) の出力を書き換えるのはダルいのでそのままとする。
概要
浮揚とバイロケーションの歴史
この対談では、エール大学の歴史学者であるカルロス・エイア教授が、彼の著書「They Flew, A History of the Impossible」について議論しています。
対談の主な焦点は、歴史における浮揚とバイロケーションの現象、特に中世後期から近代初期のヨーロッパにあります。エイア教授は、セント・テレサ修道院への訪問が、浮揚が歴史的事実として扱われていることに彼が気づいたきっかけとなり、研究に駆り立てられたと述べています。
スペイン異端審問所の詳細な記録や、宗教改革によるカトリックとプロテスタント双方における「奇跡」に対する見方の変化についても触れられています。エイア教授は、歴史学において、「ドグマティックな唯物論」に懐疑的であるべきだと主張し、現代でもこのような現象が稀ながら存在し、真剣な調査に値する可能性があると示唆しています。
聖人や魔女の浮揚現象が16世紀と17世紀にピークに達したこと、そしてスピリチュアリズムの時代になって「レヴィテーション」という言葉が作られたことも説明されています。
目次
- 前置き
- 概要
- 詳細
- 『不可能の歴史』
- 16世紀と17世紀が「飛行する人間」の最盛期
- アビラの聖テレサ
- クベルティーノの聖ヨゼフ
- Daniel Douglas Hume の浮遊事例
- bi-location
- 時系列
- 主要関係者
- 情報源
- 文字起こし
詳細
要約書:「浮揚とバイロケーションの歴史」
主要テーマと重要な事実
本要約書は、イェール大学の歴史学・宗教学教授であるカルロス・エイア教授とジェフリー・ミシュラブ氏の対談「浮揚とバイロケーションの歴史」に基づいています。対談は、エイア教授の著書『彼らは飛んだ:不可能の歴史』を中心に、特に16世紀から17世紀のヨーロッパにおける浮揚(レヴィテーション)とバイロケーションという「奇妙な出来事」について深く掘り下げています。
1. 調査の動機と歴史的背景
- 個人的なきっかけ: エイア教授は40年前、イタリアの聖テレサ修道院を訪れた際に、聖テレサと聖十字架のヨハネが「初めて一緒に浮揚した場所」と案内されたことに衝撃を受け、この現象が歴史的にどのように「事実」として扱われてきたかに関心を持った。「浮揚が、階段や台所のフライパンと何ら変わらない事実として扱われているという事実」に驚き、「認知的不協和」あるいは「認知覚醒」を経験したと語る (0:03:10)。
- 「不可能の歴史」の探求: 教授は、長年にわたり断続的にこのテーマを研究し、COVID-19パンデミック中に多くの執筆を進めた。デジタル化された古文書やイェール大学からの郵送サービスにより、自宅からでも研究が可能であった。
- スペイン異端審問所の記録: エイア教授は、スペイン異端審問所の「非常に現代的な」ほど詳細な記録(取り調べのメモ、往復書簡、拷問の記録まで)を研究した (0:05:39)。これらの記録は、当時の人々が浮揚やバイロケーションをいかに真剣に受け止めていたかを示している。
- 近代への移行期の複雑性: 16世紀から17世紀はルネサンスとモダニズムの萌芽期でありながら、中世の思想も色濃く残る過渡期であった (0:06:22)。この時代は、プロテスタント改革が始まったことで宗教的対立が激しく、カトリック教会とプロテスタント双方で人々の思想や言動が厳しく監視されていた。
2. 浮揚とバイロケーションの解釈と調査
- 用語の進化: 「レヴィテーション」という用語は、19世紀の心霊主義時代まで一般的に使われていなかった (0:09:01)。それ以前は、単に「飛ぶ」と表現されていた。
- カトリックとプロテスタントの見解:カトリック教会: 教会は、聖人の浮揚の報告を「懐疑的な目」で「非常に慎重に」調査した (0:09:01)。これは、現象が神からのものか悪魔からのものかを区別する必要があったためである。「中世の浮揚者は、原則として、現代の聖人たちが経験したのと同じように、疑われたり尋問を受けたりすることはなかった。」 (0:09:34)。教会は、真の聖人か、悪魔と契約した詐欺師かを区別しようとした。
- プロテスタント: プロテスタントは、悪魔が人々を浮揚させたりバイロケートさせたりすることは信じていたが、神がそうすることは決してないと信じていた。「プロテスタント側では、空中に上がる者は誰でも悪魔との契約や魔女であると疑われた。」 (0:11:20)。この時代、魔女裁判で数千人が処刑されたが、これは両陣営(カトリックとプロテスタント)で行われていた。
- 懐疑論の存在: 15世紀後半から17世紀にかけて、浮揚現象に対する懐疑論者も存在した。例えば、あるルター派の作家は、魔女とされた女性たちが幻覚を見ているだけだと主張した (0:14:11)。
- 心霊主義と「レヴィテーション」: 19世紀の心霊主義者たちは「レヴィテーション」という用語を生み出し、現象に大きな関心を示した。ダニエル・ダグラス・ヒュームのような著名な霊媒師の浮揚は、「絶対に現実であると信じた」多くの人々によって目撃された (0:15:39)。トーマス・エジソン、アーサー・コナン・ドイル、メアリー・トッド・リンカーンなどの著名人も心霊現象に関心を持っていた。浮揚する家具(ピアノを含む)の報告も多く存在した (0:18:40)。心霊主義は、浮揚現象から宗教的な側面を取り除き、神や悪魔ではなく「霊の作用」と解釈した (0:19:39)。
3. 聖人たちの事例
- 聖テレサ: 彼女は40代で浮揚を始め、修道女たちに「次私を上げるのを見たら、私を抑えつけなさい」と命じた (0:21:52)。こ れは、注目を浴びることや、悪魔の仕業と疑われることを恐れたためである。異端審問所は、彼女が「利己的」な目的で現象を起こしていないかに関心を持った。彼女は後に浮揚が再発したと手紙で告白している。
- 聖ヨセフ・オブ・クペルティーノ: 彼は「史上最高の浮揚者」とエイア教授は称する (0:25:15)。彼の浮揚は「神秘的なエクスタシーの副産物」として起こり、体は硬直し、感覚を失った。目撃者からは、体が「ほぼ無重力」で、風で部屋の反対側まで「漂う」といった証言があった (0:26:32)。彼の衣服も硬直し、まるで「次元の泡」に包まれているようだったという。「彼らは文字通り時間空間の外にいる」という科学者の説も紹介されている (0:28:07)。彼がミサ中に何時間も浮揚した後、正確に中断したところから再開したという証言もある (0:29:39)。教会当局は、彼の極端な修行(「自己虐待」とさえ言える)や、あまりにも多くの人々が彼を見に集まるため、彼をますます人里離れた場所へ送った (0:30:55)。彼は人生の最後の10年間、実質的に囚人のように過ごした (0:31:36)。エイア教授は、多くの証言があり、偽造が不可能であったという理由から、彼の浮揚を真剣に受け止めている (0:32:26)。
- ソラ・マリア・デ・アグレダ: 彼女は17世紀にスペインの修道院でエクスタシー状態にある間に、現在のテキサスやニューメキシコに500回以上「バイロケート」し、ネイティブアメリカンにキリスト教を布教したと報告されている (0:41:36)。彼女はどのように現象が起きたか分からなかったが、雨を感じたり、温度を感じたり、現地の人々と意思疎通ができたと証言している (0:43:27)。修道院には、彼女 がニューメキシコの動植物を刺繍した布の切れ端が残っているという。彼女は「聖母マリアの生涯」という100万語にも及ぶ本を執筆したが、これが彼女の列聖プロセスを妨げている一因となっている (0:45:09)。
4. 現代における現象と学術的視点
- 現代の発生頻度: エイア教授は、現代では浮揚やバイロケーションといった出来事が「ニュースにならない」だけで、実際には「まだ起こっている」と考えている (0:35:56)。1970年代にカイロで2年間毎日何千人もの人々が聖母マリアの出現を目撃した事例(ザイトゥーンの聖母出現)が、メディアにほとんど報じられなかったことに言及している (0:36:31)。
- バイロケーションの難しさ: バイロケーションは「両端に目撃者が必要」であるため、浮揚よりも立証が難しい (0:40:20)。しかし、第二次世界大戦中にナチス占領下のフランスで囚人にバイロケートし、レジスタンスや連合国パイロットを救出したイヴォンヌ・エイメー・ド・マルイストワール修道女の例を挙げている (0:38:47)。
- 歴史家の立場: エイア教授は、多くの現代の歴史学者が「独断的な唯物論」、すなわち「存在するものは物質世界だけである」という仮定に囚われていると批判する (0:49:11)。彼は、過去の現象の「可能性を割り引くべきではない」と主張し、特に「証言」が重要であると強調する (0:47:38)。彼は「何が起こったのかを証明することはできない」としながらも、「独断的な唯物論について懐疑的であるべき」と訴える (0:53:09)。
- 多次元宇宙の可能性: 彼は、科学者が「他の次元が存在する」という可能性を真剣に議論していることに言及し、アインシュタインの相対性理論やブラックホールの謎など、まだ理解されていない多くの事柄があることを指摘する (0:50:49)。
- パラダイムシフトと社会的事実: 教授は、歴史上「あらゆる時代にその時代の偏見がある」と述べ、現代もまた「時代と場所に、文化に縛られている」と指摘する (0:54:20)。「社会的事実」とは、ある文化において事実と信じられ、行動を支配する疑うことのできない仮定であると説明する (0:54:47)。
5. 結論
エイア教授の研究は、歴史学において、超常現象の報告を単なる迷信として片付けるのではなく、当時の人々がそれをどのように認識し、解釈し、対処したかという「歴史的事実」として、また、現象自体の可能性についても、よりオープンマインドなアプローチを提唱している。彼の個人的な「認知覚醒」から始まった研究は、歴史、宗教、科学、そして人間の意識の境界を探る学際的な試みとなっている。
『不可能の歴史』
カルロス・エイヤー教授の著書『不可能の歴史(They Flew, A History of the Impossible)』は、歴史学者の視点から、浮揚(levitation)とバイロケーション(bilocation)といった「非常に奇妙な出来事」を探求しています。
本書のより大きな文脈と内容については、以下の点が挙げられます。
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執筆の動機と個人的な影響:
- エイヤー教授の探求は、約40年前にイタリアのアビラの聖テレサ修道院を訪れた際に始まりました。
- 彼は、聖テレサと十字架の聖ヨハネが初めて一緒に浮揚したとされる場所の説明を受け、その浮揚が「階段や台所のフライパンと何ら変わらない事実として扱われている」ことに驚きました。
- この経験は彼に「認知的不協和または認知的な目覚め」をもたらし、16世紀には多くの人々にとって事実であったことが、20世紀にまで語り継がれていることに衝撃を受けました。この出来事が彼を本書の執筆へと導いた 「認知的な啓発」となりました。
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研究プロセスと資料:
- エイヤー教授は、このテーマに40年間断続的に取り組み、COVID-19のパンデミック中に大半を執筆しました。
- 彼は、デジタル化された古い文献や、イェール大学が教員に郵送してくれた図書館の書籍を活用しました。
- 特に、スペイン異端審問所の詳細な記録を調査しました。異端審問所は「狂気じみたほどに、完全に強迫的にファイル保存」しており、尋問のメモ、手紙のやり取り、さらには水責めなどの拷問の詳細まで記録されていました。これらの記録から、彼は多くの情報を再構築することができました。
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歴史的背景と宗教的文脈:
- 本書は主に、ルネサンス期から近代主義が根付き始めた16世紀と17世紀のヨーロッパ(初期近代)に焦点を当てています。この時代は中世の思想もまだ強く残っていました。
- プロテスタント改革が1517年に始まり、大きな宗教的対立があったため、カトリックとプロテスタントの両方が、自らの共同体内の人々の思想や言動を厳しく監視していました。
- カトリック教会は、浮揚する修道士や修道女の報告を厳しく調査しました。彼らはこれらの現象を聖人の奇跡として容易に認めず、非常に懐疑的な目を向けていました。
- この時代には「悪魔の擁護者」という役職が設置され、列聖プロセスにおいて疑念を呈し、調査を行い、詐欺行為がないこ とを確認する役割を担いました。これは、詐欺師が暴かれることで、本物とされた事例の信憑性が高まるという、一種の「対照実験」のような役割を果たしました。
- 中世以来の古い考え方として、浮揚やバイロケーションは悪魔によって引き起こされる可能性があると信じられていました。そのため、これらの現象が神からのものか、悪魔からのものかを判断するために個人が調査されました。
- カトリックの視点: カトリック教会では、本当に敬虔な人々(神に完全に身を捧げた人々)も、悪意のある人々(悪魔に身を捧げた人々)も浮揚しうると考えられていました。
- プロテスタントの視点: プロテスタント側では、悪魔は人々を浮揚させたりバイロケーションさせたりできるが、神は決してそうしないと信じられていました。したがって、浮揚する者は悪魔との契約を結んでいるか、魔女であると疑われ、何千人もの人々が魔女として処刑されました。
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主要な事例と現象:
- 聖テレサ・デ・アビラ: 彼女の浮揚は40代で始まり、修道院長であった彼女は、修道女たちに浮揚したら自分を抑えつけるよう命じ、神にこれらの現象を止めるよう祈りました。彼女は注目を集めることを望まず、謙虚さを保とうとしました。彼女の浮揚は「神秘的なエクスタシーの副産物」とされ、身体が硬直するカタレプシー発作を伴いました。彼女の衣服も硬直しており、まるで「時空間を超越した次元の 泡」に包まれているようだったと描写されています。浮揚中に時間は経過しないかのように感じられ、エクスタシーから戻ると、中断したところから会話やミサを再開しました。
- クペルティーノの聖ヨセフ: 「史上最大の浮揚者」と評される人物です。教会は彼の聖人認定に抵抗があり、その「厳格な苦行」や、彼が引き起こす騒動のため、人生の最後の10年間はほぼ独房監禁されました。彼を見るために群衆が集まり、修道院の屋根や壁に穴を開けてまで彼を見ようとしました。彼の浮揚は「偽造が不可能」であり、数十人の人々によって目撃され、木の上に浮揚して降りられなくなり、はしごで降ろさなければならなかったという記録もあります。
- アグレダのソロマリア(青衣の聖母): 17世紀にスペインの修道院から、現在のテキサス州やニューメキシコ州に数千マイル離れて、先住民をキリスト教化するために500回以上バイロケーションしたとされています。彼女はエクスタシー状態でこれを行い、現地で雨や気温を感じ、先住民の言葉を話したと報告されています。彼女の聖人認定プロセスは、聖母マリアから啓示を受けたとされる100万語に及ぶ『聖母の生涯』を執筆したことで複雑化しています。
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「不可能」に対する現代の視点とエイヤー教授の主張:
- 現代では、このような現象は稀であるとされていますが、エイヤー教授は、単に報道されないだけかもしれないと示唆しています。
- エイヤー教授は、歴史 学者としての立場から「教条的唯物論」に懐疑的であるべきだと主張します。彼は、現代の学術界の主流である、物質世界だけが存在し、自然の法則に従わないものは存在しないという仮定に異を唱えます。
- 彼は、特に遠い過去の現象については証明できないとしながらも、証言の豊富さを理由に、そのような出来事の可能性を否定すべきではないと考えています。何百、何千人もの人々が嘘をついていると信じるのは「信念の飛躍」だと指摘します。
- 彼は、私たちが「時空間と文化に縛られている」ことを強調し、各時代にはその時代のバイアスや「社会的事実」(文化内で事実と信じられ、疑うことのできない前提)が存在すると述べています。
- エイヤー教授は、物質世界だけでなく「他の次元が存在する」可能性を示唆し、科学者の中にも多元宇宙や次元間の相互作用を論じる者がいることに言及しています。
『不可能の歴史』は、過去の「不可能な出来事」に対する歴史的な証言を深く掘り下げることで、現代の認識や科学的ドグマに疑問を投げかけ、現実に対する私たちの理解の限界を探求しようとするものです。
16世紀と17世紀が「飛行する人間」の最盛期
カルロス・エイヤー教授の著書『不可能の歴史(They Flew, A History of the Impossible)』は、16世紀と17世紀が「飛行する人間」の最盛期であったと議論しています。これは、現代における同様の現象の報告が減少しているというより大きな文脈の中で捉えられます。
16世紀と17世紀が「飛行する人間」の最盛期であった理由
エイヤー教授によると、この時代は「飛行する人間」が顕著に多かった期間です。その理由は多岐にわたります。
- カトリック世界における聖人の浮揚: カトリック教会では、聖人たちが浮揚する現象が報告されていました。しかし、教会はこれらの報告を聖人の奇跡として安易に認めず、非常に懐疑的な目で慎重に調査していました。これは、浮揚が詐欺行為である可能性や、悪魔によって引き起こされる可能性があったためです。教会は列聖プロセスにおいて「悪魔の擁護者」という役職を設け、徹底的な調査を行い、偽りのないことを確認しました。
- プロテスタント世界における魔女の飛行: 1517年にプロテスタント宗教改革が始まり、ヨーロッパでは大きな宗教的対立が生じていました。プロテスタント側では、悪魔は人々を浮揚させたりバイロケーションさせたりできるが、神は決してそうしないと信じられていました。そのため、空中に浮揚する者は悪魔との契約を結んでいるか、魔女であると疑われ、何千人もの人々が魔女として処刑されました。
- 「偽装が不可能」な証言の豊富さ: エイヤー教授は歴史家として、これらの現象に関する証言の豊富さを非常に重視しています。数十人もの人々が、例えば「木の上に突然浮揚し、そこに留まり、梯子で降ろさなければならなかった」といった出来事を目撃したと証言しており、エイヤー教授は「皆が嘘をついていると考えるのは、信念の飛躍を必要とする」と述べています。これは、当時これらの現象が広く認識され、多くの人々に事実として受け止められていたことを示唆しています。
現代における現象の減少とその文脈
16世紀と17世紀以降、浮揚やバイロケーションといった現象の報告数は「減少し始める」とエイヤー教授は指摘しています。
- 報告の有無と公衆の認識: エイヤー教授は、現代においてこれらの現象が稀であると認識されていることについて、「私たちはそれらについて聞いていないだけかもしれない」と示唆しています。現象は個人的な親しいサークル内に留まり、ニュースになることはないと述べています。
- 概念の変化: 「浮揚(levitation)」という用語自体が、19世紀の心霊主義時代に造語されたものです。この時代に、浮揚は宗教的な意味合いから離れ、「別の次元」に関わる現象として捉えられるようになりました。ダニエル・ダグラス・ヒュームのような心霊術の霊媒師が浮揚したとされ、ピエール・キュリーのようなノーベル賞受賞科学者も家具の浮揚を目撃したと報告されています。これは、現象自体が完全に消滅したわけではなく、その解釈や公衆への提示方法が変化したことを示唆します。
- 現代の事例の存在: エイヤー教授は、第二次世界大戦中に何百回もバイロケーションしたとされるフランスの修道女、イヴォンヌ・エーメ・ド・マルイストワール(1901年生まれ、1951年死去)の事例を挙げ、20世紀にもこれらの現象が詳細に記録されていたことを示しています。彼女の事例は、必ずしも公に報道されるわけではないが、歴史的に記録されている現象の存在を示唆しています。
- 「教条的唯物論」への疑問: エイヤー教授は、現代の学術界の主流である「教条的唯物論」(物質世界のみが存在し、自然の法則に従わないものは存在しないという仮定)に対して懐疑的であるべきだと主張します。彼は、私たちが「時空間と文化に縛られている」ことを強調し、各時代にはその時代の「社会的現実」(文化内で事実と信じられ、疑うことのできない前提)が存在すると述べています。したがって、現代の唯物論的な視点から過去の現象を「不可能」と断じるべきではないという立場です。彼は、科学者の中にも多元宇宙や次元間の相互作用を論じる者がいることを挙げ、物質世界だけでなく「他の次元が存在する」可能性を示唆しています。
このように、エイヤー教授は、16世紀と17世紀を「飛行する人間」のピークと位置づけつつ、その現象が現代では見られにくい理由として、報道の不足や社会的な認識の変化、そして現代の科学的パラダイムの限界を指摘しています。
アビラの聖テレサ
カルロス・エイヤー教授の著書『不可能の歴史(They Flew, A History of the Impossible)』は、16世紀と17世紀が「飛行する人間」の最盛期であったと議論しており、この文脈において、アビラの聖テレサは、カトリック教会によってその浮揚現象が厳しく調査された最も著名な例の一人として詳細に語られています。
聖テレサの浮揚の背景と特徴
- エイヤー教授が浮揚現象の研究を始めるきっかけとなったのは、約40年前にイタリアのアビラにある聖テレサの修道院を訪れた際、ガイドが聖テレサと十字架のヨハネが共に浮揚した場所を、まるで「台所のフライパンや階段と同じように、事実として」説明したことでした。教授は、この現象が16世紀の人々にとって、そして20世紀に至っても「事実」として受け入れられていたことに衝撃を受けました。
- 聖テレサの浮揚は、多くの場合、神秘的な エクスタシーの副産物として発生したとされます。彼女はカタレプシー発作を起こし、体が硬直して感覚を失いました。目撃者たちは、彼女の体に針を刺したり、目に蝋燭を近づけたりして反応を試みましたが、全く応答がなかったと報告されています。
- 浮揚中、聖テレサの体はほとんど重さがなくなり、目撃者が息を吹きかけるだけで部屋の反対側に漂うほどだったという記述もあります。また、彼女の体だけでなく、着衣も硬直し、しわが動くこともなく、まるで「次元の泡」に包まれているかのようだったとされ、これは浮揚者が「時間空間の外」にいるためだと示唆されています。
- エクスタシーから戻った後、彼女は時間の経過を全く感じず、中断した会話や行動を正確に再開することができたと言われています。
- 聖テレサと十字架のヨハネが同時に浮揚したという事例は、1572年から1574年の間に起こったとされています。二人は、修道女が外部と隔てられる格子のついた小さな開口部を通して三位一体について議論している最中に、共にエクスタシー状態に入り、浮揚したと報告されています。
教会と社会の反応
- 16世紀から17世紀にかけて、浮揚には道徳的側面がありました。カトリック教会では、真に聖なる人々が浮揚できると信じられていましたが、悪魔と契約した人々も浮揚できると考えられていたため、その現象が「正しい源」から来るものなのか、「間違った源」から来るものなのかを区別するための綿密な調査が行われました。
- 教会は、聖テレサのような浮揚の報告を非常に懐疑的な目で慎重に調査しました。これは、詐欺行為や悪魔によるものである可能性を排除するためでした。列聖プロセスにおいては、「悪魔の擁護者」という役職が設けられ、徹底的な調査と疑問の提示が行われました。
- 聖テレサは、浮揚が注目を集め、トラブルになることを避けるため、自身が浮揚した際にはシスターたちに押さえつけるよう命じ、神にこの現象を止めるよう祈ったと伝えられています。彼女は、教会が最も重視する徳である「謙遜」を保ちたかったのです。
- 聖テレサの事例は、当時、非常に多くの人々によって目撃され、その証言が詳細に記録されているため、エイヤー教授は「全員が嘘をついていると考えるのは、信念の飛躍を必要とする」と述べ、これらの出来事を真剣に受け止めるべきだと主張しています。
聖テレサの事例は、超常現象が単なる迷信としてではなく、当時の文化と宗教的信念の中でどのように「事実」として扱われ、厳格な審査の対象となっていたかを具体的に示すものとして、エイヤー教授の研究において重要な位置を占めています。
クベルティーノの聖ヨゼフ
カルロス・エイヤー教授の著書『不可能の歴史(They Flew, A History of the Impossible)』では、クペルティーノの聖ヨゼフ(St. Joseph of Cupertino)がアビラの聖テレサと並ぶ最も著名な浮揚者の一人として詳細に議論されています。彼の事例は、16世紀から17世紀が「飛行する人間」の最盛期であったという教授の主張を補強する重要なものです。
クペルティーノの聖ヨゼフの浮揚現象
- 神秘的エクスタシーの副産物: 聖ヨゼフの浮揚は、多くの場合、神秘的なエクスタシーの副産物として発生しました。これはアビラの聖テレサの事例と同様です。
- カタレプシー発作: 彼はエクスタシーに入るとカタレプシー発作を起こし、身体がその場に硬直し、感覚を失いました。目撃者が針を刺したり、目にろうそくを近づけたりしても反応がなかったと報告されています。
- 次元の泡: 彼の浮揚中、衣服もしわ一つなく硬直し、まるで「次元の泡」に包まれているかのようでした。これは、浮揚者が「時間空間の外」にいるため、重力が適用されないことを示唆しています。
- 時間の感覚の欠如: エクスタシーから戻った後、聖ヨゼフは時間の経過を全く感じず、何時間も浮揚した後でも、中断したミサの朗読を次の単語から正確に再開することができました。
- 証明の難しさ: エイヤー教授は、彼の浮揚が「偽装が不可能」であった多くの証言が存在すると強調しています。例えば、彼は突然木の上に浮揚してそこに留まり、はしごを使わなければ降ろすことができなかったという証言があります。教授は、「全員が嘘をついていると考えるのは、信念の飛躍を必要とする」と述べ、これらの証言の信憑性を高く評価しています。