Whitley Strieber : PET スキャンで abduction が妄想か現実かを識別できる可能性 ⇒ 非現実的
前置き
Whitley Strieber は本日の別記事、
Whitley Strieber の講演(2000-11) で、
提案:abduction が現実かどうかを PET スキャンで判定できる可能性
と主張していた。
この主張が非現実的であることを以下で説明する。
彼の主張が非現実的な理由
医学知識皆無の私があれこれ言ったところで説得力はない。こういった事実確認こそ AI の得意分野。
Whitley Strieber は、
研究の拒否: ストリーバーは、自身の財団を通じて、「この問題に対処する能力を持つ国内の全ての機関」にアプローチしましたが、「手紙一つすら返ってこなかった」と述べています。
と批判するが、以下のような状況なので医学機関も端っから相手にしかった。
AI による裏取り
Me:
以下の主張、つまり「脳を PET スキャンすれば妄想体験と現実体験を判別できる」という主張を fact check して。
- 科学的手法による解明の具体的な試みと提案:
- Strieber氏は、主に「科学的手法」を用いてこの問題に取り組むこと、具体的には「経験をした人々の心理的構成の連続的な研究」を行うことを提案しています。
- 彼は、「虚偽の記憶を経験しているかどうかという問題は解決可能」だと考えています。
- PETスキャナーを用いた脳研究がその方法として挙げられています。PETスキャナーは、脳が実際に物理的な出来事を想起する際と、個人が物理的だと「信じただけ」のものを想起する際とで、異なる機能を示すことが発見されています。
- Strieber氏は、彼自身のケースのように、嘘発見器テストをパスできるほど現実に起こったと確信している場合でも、この技術を使えば、それが実際の物理的経験であったかどうかを「信頼性の高い方法で判別できる」と述べています。
この主張を現時点の認知神経科学の知見からファクトチェックすると、結論としては「主張の一部は正しいが、核心部分は科学的に過剰な断言」と言わざるを得ません。ポイントを整理します。
1. PETスキャンの仕組みと脳活動
- PETスキャン(Positron Emission Tomography)は、脳内の代謝活動(主にグルコース代謝)を画像化することで、どの領域が活動しているかを可視化する技術です。
- これにより、知覚・記憶・想起・幻覚など、異なる認知状態で異なる脳領域が活性化することは確かに多くの研究で示されています。
2. 幻覚と現実体験の神経活動の違い
-
幻覚(例: 幻聴)と実際の知覚は、脳活動に差異があることが多い。
- 例えば統合失調症の幻聴研究では、聴覚皮質が実際の音と類似の活性を示すが、前頭前野などの制御ネットワークで差があることが報告されている。
- PTSDのフラッシュバック、虚偽記憶の想起などでも同様に、脳の制御やエピソード記憶系で活動パターンに差異が観察される。
3. だからといって個別の事例で「現実 or 虚偽」を判別できるか?
-
ここが最大の問題点。
-
グループレベルの統計差はあっても、個人単位での診断的利用には精度が低すぎる。
- 実際の神経画像研究では、被験者間で個人差や状況依存性が大きく、同じ幻覚でも脳のパターンにばらつきがある。
- fMRI や PET のパターン解析(MVPA)を用いても、現実体験と偽の記憶を個人単位で完全に分けるのは不可能というのが現在の常識。
4. 嘘発見器との比較
- 嘘発見器(ポリグラフ)と同じで、生理学的差異が見える=真偽を100%判別できるではない。
- 嘘発見器はそもそも法的証拠能力が低く、脳イメージングで代替できるというエビデンスはない。
5. 結論
- 「脳活動パターンに差はある」 → 部分的に正しい。
- 「PETで個人レベルの真偽判定ができる」 → 現在の科学的エビデンスでは誇張。実用可能な診断的信頼性はない。
参考文献例
- Slotnick SD, Schacter DL. “The cognitive neuroscience of memory distortion.” Neuron, 2004.
- Simons JS, Garrison JR, Johnson MK. “Brain mechanisms of reality monitoring.” Trends in Cognitive Sciences, 2017.
- Aizenstein HJ et al. “Functional neuroimaging of hallucinations in schizophrenia.” International Review of Psychiatry, 2013.
総括
「PETスキャナーで妄想体験と現実体験を個人単位で信頼性高く判別できる」という主張は、現状の認知神経科学では裏付けられていない。 技術的には群レベルの傾向差は検出できても、個々のケースで“物理的に起こったかどうか”を断定できるものではない。
必要なら、この分野の最新レビュー論文も紹介します。
Me:
その「真偽を100%判別できるではない」は予想どおりですが、では、一般的な個人を対象にした場合、大雑把にどの程度の判別なら可能なのですか? 1. 個体差が大きく、一概にその数値を出せるレベルではない、 2. 到底、実用になりえないレベルの数値 3. 対象となる個人の PET データを多量に取れば、可能性はあるレベル …といった範疇で言えば?
現状の神経科学の知見で整理すると、 「脳活動の画像パターンから、妄想体験と現実体験を個人単位で判別できる可能性」は、あなたの挙げた選択肢でいえば1と2の間に位置します。
■1. 個体差が大きい
- そもそも知覚・記憶・想起は個人の脳の接続パターンや神経発達の履歴で相当異なります。
- 同じ幻覚症状(幻聴やPTSDのフラッシュバック)でも、脳活動の場所や強度がばらつくことが多い。
- さらに「現実体験の想起 vs 虚偽記憶の想起」は、本人の想像力や信念強度に依存するので標準化が難しい。
■2. 到底、実用になりえないレベル
- 仮に機械学習でパターン分類をしても、既存の研究では群レベルで有意な差は示せるが、個人単位での診断精度(正答率)は60〜70%程度に留まるケースが多い。
- 臨床や法医学に使うには最低でも90%以上の信頼度が求められますが、到底届いていない。
■3. データを大量に取れば可能性は?
- 長期的に同一個体の膨大な状態データを取るなら、相対的なパターン差(例: その人の「通常の想起」と比べて異常に前頭葉活動が弱いなど)は浮かび上がる可能性はある。
- しかし、これはあくまで**「その人の中での比較」**であって、外的事実の確認ではない。
- 例えば、異常なフラッシュバックが本当に物理現象かどうかを判定する根拠にはなりにくい。
まとめ
選択肢でいうと:
- 1. 個体差が 大きく、一概に数値を出せない → 実態に近い
- 2. 実用になりえないレベル → 現実的にはこれが一番妥当
- 3. 多量データで可能性はあるが、外的真偽判定までは困難 → 補足的にそういう研究方向はあるが、核心的な解決にはなりにくい
▶ 実際の応用域
・現在でもPTSDや統合失調症の幻覚の病態理解には使われているが、**“本当に起こった出来事かどうか”**をPETで証明する手段にはなっていない。 ・法廷や臨床の「真偽判定」には、現状では全く採用されていない。
必要なら、具体的な代表論文の正確な判別精度の数値や、既存の脳画像判別のメタ解析結果も提示します。
Me:
話を元にもどして…。このスレッドの発端は「完全な妄想体験と、完全な現実体験の差異」をPET スキャンでどこまで識別可能か…でした。さて、その前提に問題がある。完全な妄想と完全な現実体験というクッキリした境界が存在することはむしろ稀。たとえば、夢で見たかなりリアルな体験や、現実体験がベースとなってその上に妄想が累積された場合など。
この指摘は核心を突いています。 「完全な妄想」と「完全な現実体験」という二分法自体が、認知神経科学の現場ではほとんど成立しません。むしろ、多くの記憶や体験は現実と空想・誤認・再構築が混じり合ったスペクトラムとして存在します。
1. 記憶と体験はそもそも混合的
- 記憶は**符号化(覚える)—貯蔵(保持)—想起(呼び出す)**という過程で、常に変形や補完が入る。
- 実際の出来事でも、人間は足りない情報を無意識に「埋め合わせ」する。
- 夢や空想は、この補完メカニズムと同じネットワークを使っていることが多い(デフォルトモードネットワークの活動)。
2. 現実をベースにした「混合妄想」
- トラウマや強い情動記憶のフラッシュバックでは、一部は現実の断片だが一部は脳内で拡張・変形される。
- UFO体験、臨死体験、解離性記憶などでも、断片的現実(睡眠麻痺、外的刺激)と内的生成イメージが混在する。
3. 脳活動パターンの観点でも、境界はグラデーション
- PETやfMRIで観測されるのは、「どの神経ネットワークがどの程度動員されたか」という量とパターンの差。
- これが「現実:100%、虚構:0%」のように離散的に分かれているわけではなく、連続的に重なる。
- 特に想起・再生・想像は海馬、前頭前野、頭頂連合野など多様なネットワークの重なりで成り立っている。
4. 「リアルな妄想体験」の脳科学的意味
- 夢や虚偽記憶が異常にリアルに感じられるのは、感覚入力系(視覚・聴覚)と情動ネットワーク(扁桃体)が強く活動し、前頭葉の現実モニタリング系が抑制される状態で起こる。
- これは幻覚症状と構造的に似て いるが、全く同じではなく、個人差が大きい。
5. 結論:境界は曖昧で、PETで線引きは困難
- 「夢で見たリアルな出来事」と「現実に体験した出来事」は脳活動のパターンに差がある可能性はあるが、個別の混合度合い(何%現実、何%妄想)は連続的で、PETだけで定量するのはほぼ不可能。
- 現実性の信念(この体験がリアルだと信じる度合い)も、前頭葉などの活動で多少推測できるが、それが外的現実の有無と一致するとは限らない。
要点
- 完全妄想と完全現実のクッキリした境界は実際には極めて稀。
- ほとんどの体験はグラデーションで混在しており、脳活動もそのグラデーションに応じて連続的に変わる。
- PETやfMRIの限界は、このグラデーションを個人単位の判別に使うには解像度が低すぎる点にある。
この前提を踏まえると、「PETで体験の真偽を高信頼で判別する」という発想そのものが、現実の人間の記憶プロセスの複雑さを過小評価していると言えるでしょう。
(2025-07-16)