「無数の人間がいるのに、なぜたったひとりのこの俺が――俺なんだ?」⇒ この難問を解く (途中1)(書式変換)
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前置き
「無数の人間がいるのに、なぜたったひとりのこの俺が――俺なんだ?」とは意味不明のタイトルだが、その意味は…
文学作品の中で述べられる超難問体験/自我体験の例には、体験が誘発される条件が示唆される場合がある。最近の例として、和製ヒロイック·ファンタジー、『グイン·サーガ』(第60巻、早川書房、一九九八年)の一節から引用しよう。
そうなんだ …… 全部本当にあったことだったんだよな …… 何もかもだ。俺の人生 …… いったいなんだって、こんなふしぎな人生が俺の人生だなんて––信じられるか?俺は–俺は …… 何が不思議だっていって、俺が俺だってことだよ! こんな不思議なことはありゃしない。この世に何千万人の人間が生まれ、死んでゆくのに、なぜたったひとりのこの俺が–俺なんだ?俺だったんだ?(二八ー二九頁)