催眠中の時間歪曲 (+文字起こし)
要旨
非日常的な出来事が生じた時に主観的な時間が歪むことがある。
死の間際で走馬灯のように過去の記憶が蘇ったり、交通事故の体験時間がスローモーションになって体験されたり。
催眠中にも主観的に意識する時間が大幅に歪むことが知られている。それがエリクソンのいう「時間歪曲」。
以下では
アーネスト・L. ロッシー編 『ミルトン・H.エリクソン全集 第二巻 感覚、知覚および心理生理学的過程の催眠性変容 』 二瓶社 2005年
からいくつかその具体例を引用する(343頁~355頁の範囲から抽出)。具体例を読むとその異常さに驚く。
履歴
(2024-08-29) 書式変換(FC2Blog → markdown)
(2024-01-31) 追加。文字起こしを追加。❏ メモ:催眠中の時間歪曲 (+文字起こし 追加)
(2012-01-10) 作成。メモ:催眠中の時間歪曲
(2012-01-10 begind)
意識と時間の関係で上の引用事例のような衝撃を受ける有名な本をもう一つ。
ベンジャミン・リベット 『マインド・タイム 脳と意識の時間』 岩波書店 2005年
この本に書かれている発見は、催眠中の時間歪曲とは別の意味で衝撃を受ける。
(2012-01-10 end)
(2024-01-31 begin)
上の本からの scan 画像を文字起こししておく。MS 標準の PowerToys/Text Extractor を使用。
個人の報告 以下に 2 つの症例報告を示す。
(1)「今何をしたいですか?」 「夫は自分の銃の弾を作っています。私は夫が弾を作るのに合わせて、それを数えています」 「どのくらいの間、その作業をなさっていたいですか?」 「 IO 分間です」それから以下の暗示が与えられた。
- 時間歪曲:Ⅱ 343
「私が『さあ』と始まりの合図を出したら、少なくとも 10 分間はあなたの特別な時間です。その時間を、あなたはご主人が弾を作るのに合わせて、それを数えることに費やします」
「音の合図があったら、あなたはそれに気づきますよ」 「始まりの合図をしますよ。『さあ』」 音律をとる道具(音叉)が 4 秒から 7 秒の間に音を立た。 10 秒後に「さあ、心がまっ白になりますよ。まっ白になりますよ」と伝えた。
「さて、今の体験について教えてください」 「クラブの鋳造パ ー ティ ー でのことでした。たいへん混んでいました。おそらく 6 分間数えたところで、弾が尽きてしまいました。それで私は待たされたため、 10 分間ずっと数えていたわけではありません。私が数えている間に、少年が歩いてきました。少年はしやべりながら手を振っていて、鉛の入ったポットをひっ繰り返しました。それで少年は足にひどい火傷を負いました。私は立ち上がりましたが、再び座って数え続けました。他の人たちはあちこち走り回っていました。残った鉛をスト ー プの上に戻しました。中断して待った時点で 493 、それから後には 546 まで数えました」
「急ぎましたか?」 「数えるときにそんなに急ぎはしませんでしたが、ずっと忙しかったですね」 「現実的でしたか?」 「ええ」 「始めの合図をしたら、声を出して数えて、どんなふうに弾を数えていたのかを教えてください。さぁ」
被験者は 1 分間に 54 の割合で数えた。 「音の合図には気づいていましたか?」 「鉛をこぼしたときに、ジュウジュウいっていました」 「どのくらいの間ジュウジュウいっていましたか?」 「3 、4 分ぐらいのようでした」
被験者は 30 分を自動車に乗ることに費やし、彼女と彼女の妺、そして 2人の子どもたちが後部座席にどんなふうに座りながら、道沿いに見えた牛をどのように数えたかを話した。妺は 45 頭数えて、 42 頭だった彼女に勝った。
それから彼女らは「 C 」という文字の入ったナンパ ープレートを数えることに決めた。しかし、交通量が少なく、このゲ ームの進行はゆっくりだった。
2 人とも同じナンバープレートを見て、全部で 14 だった。その後彼女たちは道のそばの売店で止まって、歯が何本か抜けたお下げ髪の少女からレモネー ドを買った。なぜなら「女の子が気の毒に思えたから」ということだった。
この体験は連続的なもので、いかなる種類の省略もなく、「ゆうに 30 分は」かかりそうである。楽しかったかと被験者に尋ねると、「もちろん」と答えた。
実際、この細かい反応は、「あなたはこれから特別な時間の少なくとも 30分を自動車に乗ることに費やします。そして、それはとてもいいドライプになります」という簡単な暗示に対し、10 秒間の割り当てられた時間のうちに引き起こされた。
354 Ⅳ.時間歪曲
偶発的な出来事
まれならす、偶発的で時にはありがたくないようなことが起きて報告された。それらをここに挙げる。すべてが時間歪曲の間に起こったことだが、これらの体験が現実的であったことの納得のいく証拠になるからである。
・被験者がボートを漕いでいるときに、オール受けをなくした。
・員殻を拾っている際に、クラゲを踏んだ。
・車で道から出るときに、被験者はカーブを曲がり損ねた。
・「母が、私が上着を着るのを手伝ってくれた。それにはボタンがかかっていなかった。父がベストのボタンをはめた」
・タイヤ交換のときに、被験者はあるべき所に 3 つの突起しか見つけられなかった。後で、ホイールキャップの中に 4 つ目を見つけた。
・「私は下し草用の畑を急いで通り過ぎましたが、鼻が刺激されました」
・被験者が電球を換える際に、がらくたかごに投げ入れた一個が割れた。
・ドリルで穴を開けているとき、被験者の隣の男が熱さに参ってその場から離れた。
・教会で賛美歌を歌うように求められて、「私は壇上に立って、パプテスト派の人たちに『私はユダヤ教の聖歌を歌います』と言って最後まで歌いました」。(割り当てられた時間である 10 秒の間に!)
・ゴミを燃やす ときに、被験者はマッチをズボンですって、マッチが燃えつきるのを見つめていた。
・「私は髭を剃りましたが、その後顔を洗いませんでした。どうしてそうしなかったのかという根拠はありません」(暗示は「あなたは差を剃ります」。割り当てられた時間は 10 秒)
・「納屋の扉はびったりと閉まっていました。なぜなら雨が降っていたからです」
・「髭を剃ってもらう間、床屋はもう一人の床屋とあまりにも長く話していたので、髭剃りの石齢の泡が固まり始めました」
・アヤメを引き抜いて数えるときに、「たいへん時間がかかった理由は、それらの汚れを落とさなければならなかったからです」
・フットボールの試合を見ているとき、スタンドでの喧嘩で被験者の注意はプレー から引き離された。
・ジャガイモをかごから取り出して袋に詰めながら数えていると、いくつかがまたかごに落ちて縁に当たった。「私はジャガイモをもう一度数えなければなりませんでした」
・被験者がキャンディーを箱から取り出しながら数えたとき、「漬れて砕けて、中身が少しはみ出しているイチゴクリームのキャンディーがありました。それをどうしようかという考えが私の心をかすめました」
・ガムドロップを数えている際、被験者はいくつかがくっついているのに気づいた。「私はすべての固まりを取り出し、バラバラに離し、別々の山に積みました」
・ベリーを摘んでいるとき、段ボールがいつばいになってしまって、中身がこぼれ続けた。
・海水浴で波乗りをしているとき、被験者はお尻を打った。
・赤ちゃんを洗っているとき、被験者は水を全部こぼしてしまった。
・サンドイッチを作っていたら、被験者はナイフで指を切り出血した。
・ひょこを数えていたら、一羽に羽毛が生え始め、 1 羽が病気であることに被験者は気づいた。
・TRUTH OR CONSEQUENCES (質問に答えられなかったり、間違った答えを出した人が罰を受けるゲーム)をやっていたら、「彼らは私に目隠しをし、仲間の 1 人が私にキスをしたので私は恥ずかしい思いをしました」
・「蓄音機はゆっくりと回り出しました。私はそのねじをもう一度巻かねばなりませんでした」
・ローラースケートをしていて、被験者は転んだ。
・編み物をしていたら、毛糸が切れた。
・靴を買う際、彼女は一度に 4 足試着した。
・カウンセリングにやってきた学生が言った。「私は気がおかしくなっているので、ここにいないということをわかってほしいのです」
・ひょこを数えていると、一羽目が被験者の腕に排便した。それからどうし
(2024-01-31 end)
(2024-08-29)