死期が迫った人に「死後の世界の素晴らしさ」を説くべきではない。なぜなら…
前置き
Scott Taylor (Monroe Inst. 元トップ) の講演:文字起こし+和訳
の体験を題材にしてタイトルの件を説明する。
この講演の末尾で、Scott Taylor は
- 死期が迫った自分の親戚に「死後の世界の素晴らしさ」を教えた体験
を感動的なものとして語っているが、私はそれに反対する。なぜ反対するのか、その理由を以下で詳しく説明する。
最初に Scott Taylor の問題の体験を彼の講演から引用する。
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さて、10分ほど時間があるので、キャシーについて話したい。 私の従姉妹のキャシーは、私の祖母のそちらの家系に属している。 (1:15:34)
彼女はタオ家の9人兄弟の長女だった。 彼らはみんな子供を何人も産んでいたから、そっち側には何十万人ものいとこがいるんだ。 私はキャシーをよく知らなかった。 2年前、PJ叔父さんから電話があった。 彼女は末期がんなんだ。 お見舞いに行ったけど、彼女は死ぬことを恐れていないよ。 (1:16:00)
彼女は死ぬのが怖いんだ。 スコット、君は死について知っているよね? 彼女と話してきてくれないか? もちろん、喜んで話しに行くよ。 それで翌日行って、キャシーを見つけたんだ。彼女は半寝状態で、私は彼女を起こし、自己紹介をし直した。 (1:16:27)
そして彼女にとても直接話しかけて、キャシー、何が起こっているかというと、昨日PJが私に電話してきて、あなたは死ぬのが怖いと言ったんです。 (1:16:38)
そして、私はあなたが行こうとしているところに行ったことがあります。 それについて話したい? いいえ。 これは私が思っていたような展開ではありませんね。 どうしたらいいか考えているうちに、気まずい沈黙が訪れた。 テレビにはバイキングスの試合が映っている。 これは時間の無駄だ。 (1:17:13)
バイキングスがいつも負けるからではなく、これは彼女の人生で最も重要な転機だからだ。 何とかしなきゃ。 だからCMが流れたら、共通の親戚の話をし始めたんだ。PJ叔父さんはどうしてるとか、息子のクラークはどうしてるとかね。そうして私たちは楽しい会話を交わし、やがて亡くなった親戚の話に変わっていった。 (1:17:44)
そして彼女は私の祖母のことを本当によく知っていた。 その会話の途中で、彼女は私の目を見て、わかった、と言った。 それをほんの一欠片だけ受け取って、私はドアを開けて言った。 キャシー、素晴らしいよ。 そうなの? そうね。その代わりに、私の頭の中には小さな声がある。 (1:18:22)
他のことをしなさい。 だから私は、唯一思いつくものを選んだ。 キャシー、最後に肉体を離れるとき、誰に迎えに来てほしい? 彼女は迷うことなく、ベンおじさんと言った。まあ、ミュリエルおばさんもね。 でもベンおじさんは絶対よ いいわ。 招待されたんだ。 じゃあ、どうやって招待したってわかるの?
(1:18:57)
そう。それに伴う感情はありましたか? ええ。彼は招待されている。 どうしてわかるの? ベンおじさんを愛してた? ええ 愛してた 愛されてた? まあね いつもそばにいてくれた? ええ またそばにいてくれると信じていい じゃあ、肉体を離れたら、お願いを聞いてくれる? ベンおじさんがあなたを 光のトンネルに連れて行くから (1:19:32)
サンサンと歩いてくれないか? 急がないで。 光に行くには本当に速く行きたいだろう。 でも、ゆっくり進んでください。 驚きに満ちている。 光と音楽。 そして光にたどり着いたら、パーティーが始まるんだ。 お帰りなさいパーティーだ。 ゲストを招待するんだ。
(1:19:55)
さて、いよいよ本番だ。 ママ、パパ、おじさん、いとこ。 ペットはどう? ペットはどう? そうだね。犬のサリーとマックス。猫は? ええ、猫がいました。 ではゲストをお迎えしましょう。 パーティーは中と外、どっちがいい? 外がいいな。 (1:20:19)
さて、野原にするか、それとも木々にするか? まあ、実際には、その両方が欲しいんだけどね。 だからこの写真を選んだんだ。 テントはどう? そうだね、テントがいいね。 じゃあ、何を食べたい? ピクニック料理が食べたい。 ピクニック料理は大好き どういう意味? ハンバーガーとベーコン入りベイクドビーンズ、ポテトサラダとコールスロー。 (1:20:50)
いいね。彼女は私に萎えたの キャシー、何? 天国にはビールがあるの? 天国にはビールがある ビールもある で、虫。虫はいらないって。 虫はいらない。 だから、虫を招待しないことにする。 いいね。テーブル。そうだ。ピクニックテーブル? ピクニックテーブル。 ランナーは? そう、原色のストライプが入った細長いやつ。 その上に、ストライプの原色と同じ色の花とガラスの花瓶が欲しい。 (1:21:35)
音楽。誰かがギターを弾いている。 それはとてもクールだろう。 ギターの音楽が大好きなんだ。 ゲームはどう? ゲームはいらない キャシー 驚いたよ どうして? みんなに会いたいから。 追いつきたい。 時間を過ごしたい。 みんなに会えたらとても嬉しい。
(1:22:10)
本当に本当に疲れた。 喜んで。 それで私は彼女の頬にキスをしてその場を去った。 翌朝電話があった。 彼女は夜中の2時頃に転校していった。 では、なぜその話をしたのか? それは臨死体験が交差しているからだ。 私はそれを知っている。 何が起こるか知っている。
(1:22:43)
それに、私はTMIにいたから、あなたが非物理的な宇宙で何を構築できるかを知っている。 だから、木やテントや原色のストライプを作ることができることも知っている。 それが起こることも知っている。 そしてあなたの人生の中で、誰かがあなたに手を差し伸べて、あなたの助けが必要だと言う時が来るでしょう。 私の恐れを克服する手助けをしてほしい。 それは死の体験にまつわることかもしれないし、そうでないかもしれない。 (1:23:14)
でも、あなたがモンロー研究所にいたこと、勉強をしたこと、この惑星で生きてきたことを信じてください。 あなたは正しい言葉を言うように導かれ、彼らを平和な場所に導くでしょう。 彼らは自由になるでしょう。 ありがとう。
▼原文 展開
Alright, I've got about ten minutes, and I want to tell you about Kathy, because it's important. My cousin Kathy belongs in that side of my grandmother's side of the family. (1:15:34)
She was the eldest of nine in each one of the Tao family. They all had a pastel of kids, so that side has, I have a zillion cousins. And I didn't know Kathy that well. Two years ago, I got a call from my Uncle PJ, who said, Kathy is in hospice. She has terminal cancer. And he said, I went to visit her, and she's not afraid of dying. (1:16:00)
She's terrified of dying. And he said, Scott, you know about this death stuff, right? Would you please go and talk to her? I said, sure, I'd be glad to go talk to her. So I went the next day, and I found Kathy. And she was kind of semi-sleeping, and I woke her up and reintroduced myself, just to make sure she knew who I was and how we fit into the family. (1:16:27)
And I spoke very directly to her and said, Kathy, what's going on is that PJ called me yesterday and said that you were terrified of dying. (1:16:38)
And I have been where you are going, and it's wonderful. Would you like to talk about it? No. Oh, okay. This isn't exactly going how I thought it was going to go. So then came this moment of awkward silence as I'm trying to figure out what to do. And the Vikings game is on the television. And I'm looking at it going, this is a monumental waste of time. (1:17:13)
Not because the Vikings always lose, but because this is the most important transition in her life, and we're not talking, and I'm here. I've got to figure out a way. So when the commercial comes on, I start talking about the relatives that we have in common, and Uncle PJ, how's he doing, and his son Clark. So we have this nice conversation, and it morphs into the relatives that we knew that have passed on. (1:17:44)
And she knew my grandmother really well, and I never knew that. And in the middle of that conversation, she looks at me right in the eye and says, okay. And taking that for a small sliver, I open the door and say, it's really wonderful there. Kathy, it's extraordinary. Is it? Yes. And so instead, there's this little voice in my head that said, don't butt up against your fears. (1:18:22)
Do something else. So I picked the only thing I could think of. Kathy, when you leave your physical body for the last time, who do you want to come and pick you up? And without a second's hesitation, she says, Uncle Ben. Well, and Aunt Muriel, too. But Uncle Ben, for sure. Okay, great. He's invited. Well, how do we know we invited him? And I said, well, when we talked about him, did you picture him here in the room? (1:18:57)
Yes. Was there emotion associated with that? Yes. He's invited. How do you know? Well, did you love Uncle Ben? Yes, I did. Did he love you? Well, yeah. Was he always there for you? Yes. You can trust that he will be there for you again. Okay. So, when you leave your physical body, would you please do me a favor? Because Uncle Ben is going to take you in a tunnel to the light. (1:19:32)
Would you saunter, please? Don't go fast. You're going to want to go really fast to get to the light. But go slowly. It's filled with wonder. The lights and the music. And then when you get to the light, there's going to be a party. It's going to be a party, a welcome home party. And you get to invite the guests. Who do you want to show up? (1:19:55)
Well, we're into it now. I want Mom and Dad and Uncle this and Cousin that. How about pets? Yeah, I could do pets. Yes. Okay, so there's my dogs Sally and Max. Cats? Yeah, there was a cat. So we have the guests. Would you like the party inside or outside? I'd like it outside. (1:20:19)
Okay, do you want it in a field or in trees? Well, actually, I want it in a little bit of both. That's why I picked this picture. How about a tent? Yes, I'd love a tent. Okay, what do you want to eat? I want picnic food. I love picnic food. What does that mean? I want burgers and I want baked beans with bacon and I want potato salad and coleslaw. (1:20:50)
Great. And then she got all deflated on me. Kathy, what? Does heaven have beer? Yes, heaven has beer. I could have beer. So... Bugs. No bugs, she says. I don't want any bugs. So we're going to disinvite the bugs. Great. Tables. Yes. Picnic or card table? Picnic tables. How about a runner? Yes, one of the long, narrow ones with primary stripes. And on top of that, I want flowers and a glass vase that match the primary colors on the stripe. (1:21:35)
Music. Somebody playing the guitar. That would be so cool. I love guitar music. How about games? No. I don't want games. Really, Kathy, that surprises me. How come? Because I want to see everybody. I want to catch up. I want to spend time. It would be so nice to see them all. And then she looks at me straight in the eye and says, Scott, would you please leave? (1:22:10)
I'm really, really tired. I'd be glad to. So I kissed her on the cheek and left. Got a call the next morning. She made her transition about 2 in the morning. So why did I tell you that story? It's because of the intersection of near-death experiences. I know them. I know what happens. So I could use that as building blocks to create comfort for her. (1:22:43)
And because I've been here at TMI, I know what you can construct in the non-physical universe. So I know that you can create trees and tents and primary-colored stripes. I know that that happens. And there will be some time in your life when somebody reaches out to you and says, I need your help. I need you to help overcome my fear. And maybe it's around the experience of death, maybe it's not. (1:23:14)
But trust, because you were here at the Monroe Institute, and that you have done your studies and you have lived on this planet, that you will be ready. That you will be guided to say the right words and lead them to some place of peace. They will be free. Thank you.
動画(1:24:03)
The Relationship Between NDEs and OBEs. Scott Taylor at Monroe Institute
www.youtube.com/watch?v=15k5RVDdd74
死期が迫った人に「死後の世界の素晴らしさ」を説くべきではない理由
case-1
仮に、Scott Taylor が主張するように「死後の世界は素晴らしい」ものだとする。
その場合、死期が迫った人に「死後の世界の素晴らしさ」を説くことは余計なお節介となるので、すべきではない。
その人が、この世では絶望のまま死んでしまっても、死後は素晴らしい世界に至り感激に浸ることになる筈(Scott Taylor の主張が正しければ…だが)。
その劇的などんでん返しの感動を味わう筈が、Scott Taylor の余計なお節介のせいで、台無しになる。
映画鑑賞ですら、名作ドラマの最後の最後の大逆転劇のシーンの直前に、お節介なバカがネタを明かすようなことは顰蹙を買う。主人公が苦境の試練を受け続けるからこそ、最期の大逆転の感動がある。
不安と絶望に打ちひしがれたまま人生の最後を迎えることで、その人物は死後に最大の感激を味わえる。その感激をぶち壊すような野暮な真似は慎むべき。
case-2
次に、Scott Taylor の「死後の世界は素晴らしい」という主張が間違いだったとする。つまり、
- 死後の世界は存在するが、
- (その人物にとって)それは望ましいものではなく、むしろ忌避すべき世界だ
とする。
この場合、その人物は最後の最後で期待を裏切られ、騙されたことになる。意図しなかったとはいえ、Scott Taylor はその親戚に残酷な仕打ちをしでかしたことになる。
case-3
最後に「死後の世界など存在しなかった」とする。
この場合、Scott Taylor がその人に「死後の世界は素晴らしい」と信じさせたことは「撤回不能の裏切り」となる。
Scott Taylor のオハナシを信じたまま死んだ人にとっては、人生の最後の体験が詐欺だったことになる。
ここで反論が予想できる。
反論:この想定(=死後の世界など存在しなかった)では、騙された人は死後は無なのだから、最期に騙されても、騙された事すら無に消えるからどうでも良いのでは?
回答:そうではない。それでは
- この人間はすぐにも死んで無になるから、騙しても問題ない
と主張することになる。1秒後に死ぬから騙して良いが、1年後に死ぬ場合は騙してはならない…とはならない。50年先に死んで無になる人間を騙すことが許されないならば、死の 1秒前に騙すことも許されない。これは哲学(=概念のお遊び、知的なお遊戯)の話などではない。人間社会のルールを扱っている。
さらに、「自分は死ねば無になるのだから、最期に騙されようと騙されまいとどうでも良い」と思う人間はいない。死の一年前に騙されることが嫌なら、死の当日でも嫌だろうし、死の 1分前でも嫌な筈。
確かに死んだ人は無になる。だが、だからと言って既に死んだ人の
- この世に対する遺念(=かつて生きていた自分をこのように捉えて欲しいという願い)
まで無視して構わないことにはならない。そして「あの人物は最期に騙されたまま死んだ」という状況を、全く気にかけない人間はいない(*1)。
その思いを、当人は既に無なのだから、無 視して良いと見なすことはできない筈。
(*1)
自分の死後ならば、記念写真も SNS のデータも一切合切、消え去っても全く気にならない…そう言うかも知れない。
だったら、死の 1秒前なら全部消されても OK だよな? 1日前でもさして変わらないよな? 7日前でも OK だろ? 1年前でも OK だよな? 10年前でも OK か? 今でも OK か?
なぜ、今消されては駄目なのか? どうせ、世間様からすればそんなデータはゴミでしかないのに?
要するに…。今消されるのが嫌なならば、「本当は死後に消されるのも嫌」なのだが、当人はその機微に鈍く、何も理解していないだけ。
(2025-01-24)